予防接種の予約票を見るたびに、僕はちょっと憂鬱になっていました。3歳の娘は注射が近づくと、待合室に入った瞬間から「やだ、かえる!」と泣き出し、診察室では看護師さんに羽交い締めにされながら大暴れ。針が刺さる前から泣き叫んでいて、正直「うちの子だけこんなに酷いのかな」と落ち込んだこともあります。
でも脳科学的な理由を知ってから声かけを変えたら、大暴れの度合いがかなり落ち着きました。今回は、注射を怖がる娘に僕が実際に試した声かけと、なぜそれが効くのかをまとめます。
■なぜ3歳は予防接種でこんなに泣き暴れるのか
3歳児が予防接種で激しく泣き暴れるのは、実はごく普通の発達段階だと知っておくと気持ちが楽になります。理由は主に2つあります。
1つ目は、「痛み」という感覚と「未来の予測」を結びつける脳の働き(前頭前野)がまだ育ちきっていないこと。大人なら「一瞬の我慢で終わる」と見通しを立てて痛みに備えられますが、3歳の脳ではその見通しを立てる力が弱く、痛みへの恐怖がそのまま爆発してしまいます。
2つ目は、扁桃体という「恐怖の記憶」を司る部分が、前回の注射の痛みをしっかり覚えていること。1回でも「痛かった」経験があると、次からは針を見ただけ、いや病院の匂いを嗅いだだけで扁桃体が警報を鳴らし、体が勝手に「逃げる・暴れる」モードに入ってしまうのです。
つまり娘が暴れるのは、わがままでも僕の育て方のせいでもなく、痛みの見通しを立てる脳の部分がまだ育っていないだけなんですよね。そう分かってから、僕は「叱る」のをやめて「見通しを立てる手伝い」に切り替えることにしました。
■僕が変えた声かけ3つ
① 前日〜当日の朝:隠さずに、短く伝える
以前は「痛くないよ、大丈夫」と嘘をついて連れて行っていたのですが、これが逆効果でした。注射の後に「痛かった…パパ嘘つき」と信頼を失い、次回はさらに警戒されてしまったんです。
今は前日か当日の朝に、「今日は注射があるよ。チクッと痛いけど、ママが数える3つ数える間だけだよ」と短く伝えるようにしています。隠さないことで「不意打ち」による恐怖の上乗せを防ぎ、痛みの終わりが見えることで見通しを立てる手助けになります。
② 病院に着いてから:終わりを具体的に示す
待合室でぐずり始めたら、「大丈夫だよ」より効果があったのが、終わりを数字や動作で示すことでした。「先生が『チクッとするよ』って言ったら、ギュッと目をつぶって3つ数えよう。3つ数えたらもう終わりだからね」と、痛みの始まりと終わりを娘自身が予測できる形にしています。
見通しが立つと、脳が「いつまで続くか分からない恐怖」から「終わりが見えている我慢」に切り替わるので、暴れる強さがワントーン落ち着く実感があります。
③ 終わった直後:たっぷり褒めて、恐怖の記憶を上書きする
注射が終わった瞬間、以前の僕は「もう終わったよ、ほら大丈夫でしょ」とサラッと流していました。でも今は、「痛いのに最後までよく頑張ったね」と抱きしめて、大げさなくらい褒めるようにしています。
理由は、扁桃体に残る「痛い記憶」に、「頑張った・褒められた」というポジティブな記憶を上書きするためです。終わった直後の数分間の記憶がその後の病院への印象を左右するので、ここで安心感を与えられるかが次回の暴れ方に直結すると感じています。
■注射で泣くのは何歳まで?
僕自身も気になって調べたのですが、注射で泣いたり暴れたりするピークは3〜4歳頃で、年中・年長になると自己表現の幅が広がり「我慢する」という選択肢を取れる子が増えてくるそうです。個人差はもちろんありますが、「うちの子だけ」と思わなくて大丈夫だと知っておくと、当日の心の余裕が違ってきます。
■よくある質問
Q. 予防接種で暴れるのは異常なことですか?
A. いいえ、3歳前後では痛みの見通しを立てる脳の機能が未発達なため、暴れること自体はごく一般的な発達段階です。回数を重ねるうちに落ち着いていく子がほとんどです。
Q. 注射のたびに大泣きして、病院自体を嫌がるようになりました。どうすればいいですか?
A. 病院という場所そのものへの恐怖記憶がついてしまっている可能性があります。注射のない日に体重測定や絵本の読み聞かせなど「痛くない用事」で病院に慣れておくと、病院=痛い場所という結びつきが薄まりやすくなります。
Q. 泣かせないようにするコツはありますか?
A. 完全に泣かせないようにするより、「見通しを与える」「終わった後に安心感を与える」の2点に力を入れる方が、長期的には効果を感じています。無理に泣き止ませようとすると、かえって恐怖心を強めてしまうこともあるようです。
■まとめ
3歳の娘が予防接種で泣き叫んで暴れるのは、脳の発達段階からするとごく自然なことでした。「隠さず伝える」「終わりを具体的に示す」「終わった後に褒めて上書きする」の3つを意識するようになってから、娘の大暴れは少しずつ落ち着いてきています。次の予防接種の予約票を見て憂鬱になっている方の気持ちが、少しでも軽くなれば嬉しいです。
