「イヤ!」「じぶんで!」「ちがう!」。長女(3歳・年少)のイヤイヤ期がピークだった頃、僕は毎日この3つの言葉に振り回されていた。靴を履くだけで20分、保育園に行くだけで一悶着。ある朝、玄関で泣き叫ぶ娘を前に、僕は思わず「もう無理」とつぶやいてしまった。
イライラしているわけじゃない。ただ、ただ疲れる。イヤイヤ期の声かけについて調べると「共感しましょう」「選択肢を与えましょう」という正解はたくさん出てくるのに、「疲れた親はどうすればいいか」にはあまり触れられていない気がした。
この記事では、脳科学の視点からイヤイヤ期がなぜあんなに疲れるのかを整理しながら、実際に僕が変えた声かけと、疲れた自分自身をラクにするための工夫を、長女(3歳・年少)の実体験を交えて紹介する。
■イヤイヤ期はなぜあんなに疲れる?脳科学的な理由
イヤイヤ期がしんどいのは、親の忍耐力が足りないからではない。脳の発達段階として、子ども自身が自分の感情をコントロールできない時期だからだ。
感情をコントロールする役割を持つ脳の部位「前頭前野」は、生まれてから成人するまでゆっくり時間をかけて発達していく。3歳前後はまだこの前頭前野が未成熟で、「〜したい」という欲求(大脳辺縁系からの信号)にブレーキをかける機能がほとんど働かない。つまり子ども本人も、湧き上がる感情を抑えられずに困っているというのが実際のところだ。
さらに、3歳児はまだ「自分の気持ちを言葉で説明する」語彙・能力も発展途上のため、伝えたいことが伝えられないもどかしさが、余計に癇癪という形で爆発しやすい。
これを知っているだけで、「なんでわかってくれないんだろう」といういらだちが「まだ脳が発達中なんだから仕方ない」という理解に変わる。声かけの余裕は、知識の余裕から生まれる。
■やってしまいがちなNGな声かけ
僕自身、余裕がないときについやってしまっていたNG行動がある。
「いい加減にして」と一方的に制止する
子どもの感情を否定する言葉は、余計に癇癪を長引かせる。前頭前野が育っていない状態の子どもに「自分を落ち着かせなさい」と要求しているようなもので、そもそも実行不可能な指示になっている。
「早くして」と急かす
急かす言葉は子どもの焦りを生み、余計に動けなくなることが多い。特にイヤイヤ期は「自分でやりたい」欲求が強い時期なので、急かされること自体がさらなる抵抗を招く。
無視する・突き放す
「勝手にしなさい」と突き放すと、その場は静かになっても、子どもは「気持ちを受け止めてもらえなかった」という感覚だけが残る。
■脳科学的にみた効果的な声かけ
「制止」ではなく「気持ちの代弁」から入る
「イヤなんだね」「じぶんでやりたかったんだね」と、まず子どもの感情を言葉にして返す。前頭前野が育っていない子どもは、大人が感情を言葉にしてくれることで少しずつ「自分の状態を客観視する」練習になる。これは無理に落ち着かせようとするより効果的なことが多い。
選択肢を渡して「自分で決めた」感覚を作る
「イヤイヤ期=自分でやりたい期」でもある。「靴と靴下、どっちから履く?」のように小さな選択肢を渡すと、子ども自身のコントロール感が満たされ、抵抗が和らぐことが多い。
その場でどうにかしようとしない
前頭前野が働いていない状態の子どもに、いくら言葉を尽くしても届かないことがある。抱っこして落ち着く場所に移動する、少し時間を置くなど、「言葉で解決する」以外の選択肢を持っておくと、親自身も消耗しにくい。
■疲れた自分自身をラクにするための工夫
イヤイヤ期の記事の多くは「子どもへの対応法」に終始しがちだが、実際にしんどいのは声かけの正解を知らないことより、それを毎日繰り返す体力・気力の消耗だと僕は感じている。
僕が実際に楽になったのは、「毎回100点の声かけをしよう」とするのをやめたことだった。余裕がない日は「イヤなんだね」の一言だけ言って、あとは黙って抱っこして待つ。それだけでも十分だと割り切るようにしてから、自分を追い詰める感覚が減った。
また、「今日は癇癪が3回あった」と数える代わりに、「今日は靴を自分で履けた」のようにできたことだけを見るようにしたら、同じ毎日でも気持ちの疲れ方が違うことに気づいた。
ちなみに、外出先での癇癪対策として、我が家では気持ちを切り替えるための小さな絵本や知育グッズをバッグに忍ばせるようにしている。視線を別のものに向けられると、それだけで泣き止むきっかけになることも多い。
■よくある質問
Q. イヤイヤ期に子どもにどう声をかけたらいい?
正解を急いで伝えるより、まず「イヤだったね」「悲しかったね」と気持ちを言葉にして受け止めることが第一歩。落ち着いてから、短い言葉で伝えたいことを伝えると届きやすい。
Q. イヤイヤ期を乗り切る魔法の言葉はある?
万能の一言はないが、「◯◯と△△、どっちがいい?」という選択肢型の声かけは効果を感じやすい。子どもの「自分で決めたい」欲求を満たせるため。
Q. 育児がしんどいと感じる自分はダメな親?
しんどいと感じるのは、脳が発達途中の子どもに毎日向き合っている証拠であって、親の力不足ではない。毎回100点を目指さず、できたことだけを見る日があってもいい。
■まとめ
イヤイヤ期の疲れは、子どもの脳がまだ感情をコントロールしきれない発達段階にあることの表れであって、親のせいでも子どものわがままでもない。「制止」より「気持ちの代弁」、「正解探し」より「今日できたことを見る」。この2つを意識するようになってから、僕自身、イヤイヤ期との向き合い方が少しだけ軽くなった。
「もう無理」と思う日があってもいい。その日は、完璧な声かけより、まず自分を休ませることを優先していいのだと思う。
