STEELY DAN の Bootleg、今回はデモ音源関係から。
僕の知る限り、大雑把にはバンドのデビュー前とデビュー後に大別することができる。
①デビュー前の音源
僕が初めて手にした Bootleg はこれだった。
STONE PIANO (1988:LP)
確か STEELY DAN の作品(1972年から1980年までの7作と "GOLD" )
を輸入盤LPで揃えた頃、それらを購入したショップ(中古と輸入盤の店)に「未発表音源集」と表記をつけて置かれていた。
ジャケを裏返して収録曲のクレジットを見ると数曲は見覚えがあったが、あとは知らないものばかり。
値段は安いとは言えないが法外というほどでもなかった。
聴いてみると…決して良いとは言えない録音状態。
これがデモ音源というやつなのだと初めて知った。
その後、よく似たジャケの続編(?)も見つけた。
OLD REGIME (1987:LP)
いや、発売順は逆だったようで…(^^;
内容は "STONE PIANO" と似たり寄ったり。
各々10曲収録だった。
その後、このCDに出会う。
STEELY DAN featuring Walter Becker & Donald Fagen (1988)
これは日本のポニーキャニオンから出ていたもので18曲収録。
ま、CDになったからといって音質が良くなってはいなかったが…
※CDのジャケットには "IDA DEE" と表記
Bootleg と言ってもこのようにメジャー・レーベルからリリースされているケースもあったりして一筋縄ではいかない。
後に、これらの音源はLPで日本盤がリリースされていたことを知る。
THE EARLY YEARS (1983)
日本では VAP から出ていたそうで…しかも、2015年には Wasabi Records から12曲追加の22曲収録で紙ジャケット仕様CDとして再発されている。
これらの音源の全貌が見えたのがこのCD。
CATALYST The Original Recordings 1968-71 (1994)
29曲収録で、これ以前に入手した3枚の曲は全て網羅していた。
タイトルでこれらの楽曲がデビュー前の音源であることに確信が持てた。
さらに決定版が日本盤でリリース。
Young & Innocent Days - Complete recordings 1968-1971 (2020)
これも Wasabi Records から紙ジャケット仕様のCD2枚組で発売されたのだが、”CATALYST“ の29曲に Donald と Walter が関わった映画のサウンドトラック盤 "YOU GOTTA WALK IT LIKE YOU TALK IT" の音源8曲を加え、37曲仕様となった。
YOU GOTTA WALK IT LIKE YOU TALK IT/O.S.T. (1971)
このサントラ盤は何度かCD化されているし、正規盤なのでレア音源とは言い難い。日本では Air Mail Recordings から紙ジャケット仕様CDで出た(2007年)のが最新の再発。
それでも、2020年盤は "Complete" と謳っているのでデビュー前の音源として29曲が存在していた(もしくは流出した)ことは間違いないのだろう。
何故、入手の経緯を長々と書いたのかというと、LPとCDという容量の違いも少しは関係しているのだろうが、レア音源という代物は手を変え品を変え繰り返し出てくるということ。それは商品をパッと見ただけでは同じ内容か否かの判断がつきにくいということでもある。
それを言っておきたかったからだ。
”1968-1971” の音源29曲について。
録音は Donald の弾き語り、そこにハーモニーヴォーカルやベース、ハイハット、ギターが若干入る簡素な編成とバンド編成が半々ぐらい。
後に完パケになった曲もいくつかある。
Brooklyn、Barrytown、Parker’sBand、Charlie Freak、Any World That I'm Welcome To、The Caves Of Altamila…
2ndアルバムの収録曲のタイトルは見当たらないが、この時期に 5th "THE ROYAL SCAM" 収録の The Caves Of Altamila まであるのはちょっとした驚きだった。
とはいえ、"AJA" 前後の STEELY DAN しか知らないとあまりにラフ過ぎると感じるに違いない。
もちろん贅を尽くしたサウンドも STEELY DAN の魅力のひとつなのは間違いないが、もうひとつの特徴である「風変わりな楽曲」…その変態的コード進行(?)に惹かれる方には楽しめる音源ではないかと思う。
どうあれコアなファン向け…ま、それが Bootleg の本領とも言えるわけで。
♪
「29曲」の中でAORファンに引っかかるのは "Don't Let Me In" だろう。
STEELY DAN のアルバムに収録されたことはないが、SNEAKER の 1st に収録された曲だ。
SNEAKER/SNEAKER (1981)
そもそもバンド名が STEELY DAN の "BAD SNEAKERS" (4th収録) に由来するし、このアルバムのプロデューサーがかつて STEELY DAN のメンバーだった Jeff Baxter なのも偶然というには出来過ぎではないだろうか。
♪
デモ音源には完全なオフィシャル・リリースが1曲ある。
それは 4thアルバム収録の "Everyone’s Gone To The Movies"
4CDボックス・セット "CITIZEN 1972-1980" (1993) 唯一の未発表音源だが、1971年の録音とのクレジットがある。
「29曲」の中にはなかったから勝手に「持ち出されなかった」のだろうか。
しかし、音質は「29曲」より格段に良い。
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レア・トラックついでに…未発表曲ではないが未CD化の曲について。
それは "Dallas"と "Sail The Waterway"。
この2曲の存在はこのLPで知った。
STEELY DAN (1978:JP)
日本独自編集盤で僕は中古盤を漁っている際に知った。
1978年というと "GREATEST HITS" が出ていて日本盤も存在するのにこの時期に何故…?
LPのライナーを読んでみると、"Dallas"と "Sail The Waterway" はイギリスで発売された "FOUR TRACKS FROM STEELY DAN" という4曲入りEP(30㎝45回転盤)に収録されていた「未発表曲」とライナーに記されていた。
FOUR TRACKS FROM STEELY DAN (1977)
しかし、この2曲は未発表曲ではなく、1972年にシングル "Do It Again" より前にリリースされたものだったようで録音は1972年らしい。
このシングルについては、"CITIZEN 1972-1980" の日本盤に付属していた伊藤秀世氏監修の「ファミリーツリー(バンドの家系図のようなもの)」の中でアメリカでシングル盤として発売されていることが記されている。
また、ディスコグラフィーのサイト "Discogs" においてもこのシングルの存在が表記されている。
しかし、何故かモノラル・ミックスしか存在しないようなのだ。
もちろんラジオ用(AM用?)のモノラル・ミックスが多数存在した時代もあったわけだが。
しかし、このうち少なくとも "Dallas" のステレオ録音は存在する。
但し、STEELY DAN ではないが。
HEAD OVER HEELS/POCO (1975)
このアルバムの2018年紙ジャケット仕様再発のライナーに "Dallas" に関する記述があり、そこそこ謎が解けた。
「スティーリー・ダンがデビュー・シングルのA面として発表したのだが、
バンドの方向性に合わないという理由ですぐに回収されたいわくつきの曲」
(執筆:山田順一 UICY-78823より)
(^o^;)
POCO が Epic から ABC (STEELY DAN の在籍レーベル)に移籍した1枚目
のアルバムってことが関係あるのか、ないのか…知らんけど。
②デビュー後の音源
こちらに興味を持った理由はひとつだけ。
"The Second Arrangement" という曲を聴いてみたかった。それだけだ。
"The Second Arrangement" とは 7thアルバム "GAUCHO" の制作中に、エンジニアだかアシスタントだかの不注意でマルチトラックの一部を消去してしまったため完成しなかった曲。代わりに収録されたのが "Third World Man" だった…との噂。
これに関する盤を1枚持っていたが、中心はタイトル通り1976年、"THE ROYAL SCAM" のリハーサル音源が中心だった。
PLASTIC DILDO - '76 REHERSAL (2000)
最近になって、1980年の音源を集めた盤を発見。
THE LOST GAUCHO - THE 1980 RARITEIS (2022)
"AJA" と "GAUCHO" を聴き込んでいれば、1971年以前と比べて音質は格段に良いとしても、オリジナル・アルバムの音質とは別次元なことは覚悟が必要でしょう。
とはいえ… "GAUCHO” に "Third World Man" ではなく "The Second Arrangement" が収録されていたと想像してみると、後者の方が "GAUCHO" にはフィットするような気がしないでもない。
正確なことは知らないが、"Third World Man" が "AJA" のアウト・テイクを基にしているという話があったような覚えもあって…
また、以前にどこかで書いた気がしますが、"AJA" には隙がない重厚感がある一方で、 "GAUCHO" はどこか吹っ切れたような開放感がある…てなことを。
…妄想の域は出ませんが。(^^;
♪
ま、どうあれ Bootleg に手を出すのは「自己責任」でしょう。
近年は大手の通販サイトでも入手できる物が多いけど、輸入や中古の専門店などでしか入手できなかった頃は、法外な価格のものも少なくなかったですし。
がっかりすることを覚悟できないなら、手を出すものではありません。
そう、断言しておきます。
STEELY DAN の LIVE音源編(?)… part 3 に続く。
<(_ _)>
240625 Pirates of STEELY DAN (part 1)
240715 Pirates of STEELY DAN (part 3)