なんでそうなるの?
V (2021)
ALCATRAZZ の新作なのに Graham Bonnet はいない。
まず、僕の知る限りで経緯を整理してみることにする。
♪…
Graham が再び "ALCATRAZZ" の名前を持ち出したのは2007年。
しかし、オリジナル・メンバーは彼以外おらず、ライヴのみを行っていった。
GRAHAM BONNET BAND (以下、GBB)のファースト・アルバムの日本盤ライナー(GQCS-90241/2:執筆/山崎智之を要約)によれば…
ALCATRAZZ の名前を使うことにかつてのメンバーからクレームがついたとかで、"ALCATRAZZ featuring Graham Bonnet" と名乗る。
2007年、2010年、2013年には Joe Lynn Turner とのジョイント来日公演が実現。2010年と13年には Doogie White も参加。
2014年からは "ALCATRAZZ" の名を一旦封印、GBB として活動していく。
2015年は MICHAEL SCHENKER'S TEMPLE OF ROCK の来日公演にスペシャル・ゲストで参加、2016年には MICHAEL SCHENKER FEST にも参加し、秋にはGBB のファースト・アルバムを発表。
…という経緯のようだ。
THE BOOK/GRAHAM BONNET BAND (2016)
この時点で、バンドにはキーボードに Jimmy Waldo が加わっている。
2017年には GBB と ALCATRAZZ (GBBのベーシストを Gary Shea に交代する編成)名義でのライヴとを行い、翌年には GBB の2ndアルバムをリリースしている。
言うまでもなく、Jimmy Waldo と Gary Shea はアメリカン・プログレハードの名バンド NEW ENGLAND の出身で ALCATRAZZ のオリジナル・メンバー。
この時点で二人ともバンドの名義使用では和解していたことになる。
MEANWHILE BACK IN THE GARAGE/GRAHAM BONNET BAND (2018)
そして、2020年には ALCATRAZZ の新作がリリースされたのであるが…
BORN INNOCENT/ALCATRAZZ (2020)
…どうやら、この年末頃には「分裂」が起きていたようで、ALCATRAZZ は1:4、ヴォーカルの Graham と他の4人に分かれてしまった。
背景にはマネージメントとの行き違いが見え隠れするのだが、そもそも GBB と ALCATRAZZ の境界線が曖昧だったようにも思えるのだが。
どうあれ Bob Kulick とのバンド、BLACKTHORNE でも一緒だった Jimmy Waldo と改めて袂を分けてしまったことは…痛い。
AFTERLIFE/BLACKTHONE (1993)
その為か、GBB 3作目のレコーディングには Don Airey が参加することがアナウンスされている。
♪♪…
アルバム "V" は "BORN INNOCENT" のメンバーから、ヴォーカル の Graham を Doogie White に代えた編成で製作されている。
Doogie White といえば、Graham や Joe Lynn Turner と共に Ritchie Blackmore の "RAINBOW" に起用されたヴォーカリストのひとりだし、MICHAEL SCHENKER FEST にも参加していた方。
だから、Graham 抜きの ALCATRAZZ にも少しは期待するところがあった。
しかし、個人的には物足りない仕上がりだった。
それは Doogie のヴォーカルやバンドのサウンドが悪いのではなく、楽曲に何か魅力が足りない…繰り返し聞きたくなるような引っかかりが感じられない気がした。
アルバム "BORN INNOCENT" では、ある意味 ALCATRAZZ "ALL STARS" 的な楽曲提供や演奏参加があったので直接楽曲で比較するのはフェアじゃないかも知れない。
しかし、 Graham の声が聞けないのがALCATRAZZ らしさを感じない最大の要因なのは間違いないし…
結局、アルバム "V" は…僕にとっては逆説的に Graham Bonnet の魅力を再認識させる「惜しい作品」になってしまった。
(;^_^A