Kid Charlemagne 【滅びゆく英雄】 | 今夜はきまぐれ~Mustangのひとりごと~

今夜はきまぐれ~Mustangのひとりごと~

~WHO'LL BE THE FOOL TONIGHT~ Music Monologue by Mustang
ホントにきまぐれな更新でございます…(^^ゞ

音楽がかかるなか おまえは蝋燭の光で働いた

あのサンフランシスコの夜

おまえは街でいちばんだった

まったくの偶然でダイヤモンドと真珠をかけあわせ

おまえはそいつを世界に広めた

おまえはそのとき世界の向きを変えたんだ


イエス様みたいな気分だったのか

気づいていたのか

連中の目にはお前がチャンピオンに見えていたこと


丘の上じゃブツはケロシンで味付けされていた

でもお前のは台所なみに清潔

だれもが立ち止まって

おまえのテクニカラー・モーターホームを見入った

大物はみんなおまえの番号を壁にはっていた

きっとなんの不足もなかったはず

挑まれるとおまえはL.A.に行った

しかもたったひとりで


永遠に生きることができたのか

その日を見ることができたのか

自分の世界がまるごと崩れ去り

消えていくのが感じられたのか


去るがいい 去るがいいキッド・シャールメイン

去るがいいキッド・シャールメイン


そして今 パトロンはみな赤字のおまえを見捨て

安っぽい友だちはみんな死んでしまった

この人生はときにひどくおかしなことになる

顔をペイントしていた安ピカのフリーク連中も

人類の仲間入りをした

なかには絶対変わらないものもある


おまえはまちがっていたんだ

おまえはもう時代遅れ

ストリートの白いやつらを見てみろ


去るがいい 去るがいいキッド・シャールメイン

去るがいいキッド・シャールメイン


きちんとあと片づけをしろ さもないとみんな監獄行き

そのへんの試験管と秤は

いいから全部捨ててこい

車にガソリンは入っているか

ああ 車にはガソリンが入っている

多分廊下の先にいる連中は

おまえがだれだか知っている


うかつなものは持ち歩くな

なにしろあの男は頭が切れる

連中の目にはおまえは今もアウトローなんだ


去るがいい 去るがいいキッド・シャールメイン

去るがいいキッド・シャールメイン



♪ Kid Charlemagne



While the music played

You worked by candlelight
Those san francisco nights
You were the best in town
Just by chance you crossed

The diamond with the pearl
You turned it on the world
Thats when you turned the world around


Did you feel like Jesus
Did you realize
That you were a champion in their eyes


On the hill the stuff

Was laced with kerosene
But yours was kitchen clean
Everyone stopped to stare

At your technicolor motor home
Every A-frame had your

Number on the wall
You must have had it all
Youd go to L.A. on a dare
And you'd go it alone


Could you live forever
Could you see the day
Could you feel your whole world fall apart and fade away

Get along

Get along kid charlemagne
Get along kid charlemagne

Now your patrons have all

Left you in the red
Your low rent friends are dead
This life can be very strange
All those day-glow freaks

Who used to paint the face
They've joined the human race
Some things will never change


Son you were mistaken
You are obsolete
Look at all the white men

On the street

Get along

Get along kid charlemagne
Get along kid charlemagne

Clean this mess up

Or we'll all end up in jail
Those test tubes and the scale
Just get them all out of here
Is there gas in the car ?
I think the people down the hall
Know who you are

Careful what you carry
'Cause the man is wise
You are still an outlaw in their eyes

Get along

Get along kid charlemagne
Get along kid charlemagne



今夜はきまぐれ~Mustangのひとりごと~-the royal scam
"KID CHARLEMANGE(滅びゆく英雄)" by STEELY DAN

from album "THE ROYAL SCAM(幻想の摩天楼)"(1976)

written by Walter Becker and Donald Fagen 対訳/奥田祐士 UICY-93519より



対訳を読むと、かなり怪しいというか物騒な歌詞だ。

しかし、僕がもっとも好きな STEELY DAN の曲がこれだ。


前回に続き、 "THE ROYAL SCAM" からだが、これは僕がもっとも好きな STEELY DAN のアルバムでもある。

その理由を考えると…


彼らのアルバムの中で「最も怪しく危険な匂いがする」から…ということになるか。


ジャケットのデザインも彼らのアルバムとしては異色だと思う。

(「怪しい」だけなら、ファーストのジャケットも相当怪しいが…)


1st~4th には、どこか「のどか」というかテンションを少し緩めるような曲(詞の内容ではなく、曲調が…)入っていたが、このアルバムにはあまり緩むところがない。


まあ、"SING IN STRANGER(狂った町)" と "HAITIAN DIVORCE(ハイチ式離婚)" が緩み所(?)かも知れないが、邦題が表すようにその歌詞は決して穏やかな内容じゃない。


今回のタイトルにした "KID CHARLEMAGNE" に顕著だが、全体に「暗黒街」というかニューヨーク(もしくはアメリカ)のダークサイドを描いた「犯罪小説」のような印象を受ける。


サウンド的には、良くアルバム "AJA" の序章というか、バンド・スタイルからセッション・ミュージシャンを駆使した「構築美」を実現した最初のアルバム…のような捉えられ方が多い。

実際その通りだと思うが、逆に「完成に至る一歩手前の隙」があることが、最大の魅力ではないだろうか。


特に、リズム隊のグル―ヴは STEELY DAN のアルバムとしては最もスピード感があると思うし、"KID..." や "GREEN EARRINGS" などのギター・ソロ(Larry Carlton)も、スリリングな印象だ。


♪ Green Earrings

 

この後に発表される "AJA" と "GAUCHO" で隙のない完璧なサウンドになった時、"THE ROYAL SCAM" にあった「危険な匂い」と「スピード感」は、別世界に遠ざけられてしまった…ような気がする。


僕の感じた「危険な匂い」は、日本盤CDのライナー(執筆:大伴良則/確か最初のCD化でもライナーを担当されていたと思う)に書かれていることと、同じかも知れない。


「裏切りの売女/EVERYTHING YOU DID」の歌詞に登場するイーグルスはこの年、’60年代的アメリカとカリフォルニア幻想の週末を描いた「ホテル・カリフォルニア」を発表したが、一方でパンク、一方でディスコとクロスオーヴァー/フュージョンが台頭した1976年。この「幻想の摩天楼」も、ある種の終末感を見事に、エキセントリックに、どこかもの哀しく表現していた、その年を象徴するアルバムだった。


今夜はきまぐれ~Mustangのひとりごと~-fastlane
HOTEL CALIFORNIA/EAGLES (1976)


僕は "AJA"(1977) をリアルタイムで聴いて STEELY DAN を知った。

遡って全てのアルバムを聴いたのは1980年代末期のこと。

バンド時代も、2メン・ユニット時代も好きだが、その境界に位置すると言ってもいい "THE ROYAL SCAM" を、"KID CHARLEMAGNE" を一番繰り返し聴いている…はずだ(笑)。



僕が洋楽を熱心に聴くようになったのが、1976年。

パンクにディスコにクロスオーヴァー/フュージョンが台頭した1976年

パンクにのめり込むことはなかったが、僕の無節操な音楽趣味は時代のせいなのかな…(^^ゞ