Radioactivity | 今夜はきまぐれ~Mustangのひとりごと~

今夜はきまぐれ~Mustangのひとりごと~

~WHO'LL BE THE FOOL TONIGHT~ Music Monologue by Mustang
ホントにきまぐれな更新でございます…(^^ゞ

RADIOACTIVITY ...


ドイツのグループ、KRAFTWERK の曲。

邦題は「放射能」…


<オリジナル・ヴァージョン>


放射能は

あなたと私のために 空気中に存在する

放射能は

キュリー夫人によって 発見された

放射能

旋律に含まれる 主題


放射能は

あなたと私のために 空気中に存在する

放射能

受信機に 放射線を発する

放射能

私たちの未来に 関わるもの



♪ Radioactivity  



Radioactivity

Is in the air for you and me

Radioactivity

Discovered by Madame Curie

Radioactivity

Tune in to the melody


Radioaktivität

Für dich unt mich im all entsteht

Radioaktivität

Stahlt wellen zum empfangserät

Radioaktivität

Wenn's um unsere zukufnt ghet



今夜はきまぐれ~Mustangのひとりごと~-radioactivity
RADIOACTIVITY (1975)



この曲、時を経てアレンジのレベルではない「変異」をしていく。


昨年、KRAFTWERK の8枚のオリジナル・アルバムが初めて新規デジタル・リマスターが施され、ジャケットや一部のタイトルが変更されて再発となった。

僕は、この8枚をボックス・セット化した "THE CATALOGUE" の日本盤を入手したが、そのライナーにこんな記述がある。


ラジオ・アクテヴィティとは「放射能」と「ラジオ活動」の意味があり、「アウトバーン」のシングルがアメリカのラジオ局でさかんに流されて広まったことにインスピレーションを得たというエピソードがある。

ノスタルジックなSF的イメージとして「キュリー夫人により発見された」と歌っているが、後世になって原発問題が深刻化するにつけ、推進派と混同されるのを嫌ってかライヴやアルバム「THE MIX」では歌い始めに「ストップ」という声が入るようになった。

(執筆:中野泰博 TOCP-70819/26より)

確かに、THE MIX では「STOP」という言葉が追加されている。



<THE MIX ヴァージョン>


ストップ 放射能は

あなたと私のために 空気中に存在する

ストップ 放射能は

キュリー夫人によって 発見された

連鎖反応と変異

汚染された人口

ストップ 放射能は

あなたと私のために 空気中に存在する



♪ Radioactivity (from THE MIX)



Stop radioactivity

Is in the air for you and me

Stop radioactivity

Discoverd by Madame Curie

Chain reaction and mutation,

contaminated population

Stop radioactivity

Is in the air for you and me



今夜はきまぐれ~Mustangのひとりごと~-the mix
THE MIX (1991)


実はこのように、単に「ストップ」が付加されただけではなく、歌詞が変えられている。


KRAFTWERK のアルバムの多くは英語盤とドイツ語盤が存在するが、オリジナル・ヴァージョンでは英語~ドイツ語の歌詞になっていて、この曲に関しては英語盤とドイツ語盤に違いはない。

しかし、"THE MIX" では英語盤、ドイツ語版はそれぞれの言葉で歌われている。


♪ Radioaktivität (from THE MIX)


ドイツ語はあまり判らないが、ほぼ英語盤と同じ内容なのだろう…(^^ゞ


さらにイントロ部分で聴ける4つの単語も、オリジナルにはない。

エフェクトされているので何を言っているのか、"THE MIX" のCDでは聞き取れなかったし、ボックスセットのライナーなどにも、この4語は歌詞として記載されていない。


この4語が何かは、ライヴ・アルバム&DVDで発表された "MINIMUM-MAXIMUM" の映像の方で判る。



TSCHERNOBYL

HARRISBURG

SELLAFIELD

HIROSHIMA



さらに、このライヴ・ヴァージョンでは曲の前に語りが加えられている。

(この部分は英語盤もドイツ語盤も同じ)


<ライヴ・ヴァージョンの語り>


Sellafield 2 will produce

7.5 tons of pultonium every year.

1.5 kg of pultonium make a nuclea bomb.


Sellafield 2 will release

the same amount of radioactivity

into the environment

as Chernobyl every 4.5 years


One of these radioactive substances

kripton 85 will cause

death and skin cancer


セラフィールド核再処理工場

製造しているのは7.5トンものプルトニウム

それも毎年

1.5キロのプルトニウムから

1つ 原子爆弾のできあがり


セラフィールド核再処理工場

撒き散らすのは原爆と同量程度の放射能

周辺地域に

チェルノブイリがごとく

4年と半年ごとに


そのひとつ

放射性物質 クリプトン85が

引き金となるのは

死 そして皮膚ガン…



今夜はきまぐれ~Mustangのひとりごと~-minimum-maximum
MINIMUM-MAXIMUM (2005)



♪ Radioactivity (LIVE)

♪ Radioaktivität (LIVE)


4語のうち、SELLAFIELD(セラフィールド) と TSCHERNOBYL(チェルノブイリ:これはドイツ語表記?) は、ここにも登場する。


「セラフィールド核再処理工場」はイギリスに位置する。世界初の原子炉事故と言われるウィンズケール火災事故(1957)の現場だが、現在はセラフィールドと呼ばれているようだ。


「チェルノブイリ」は言うまでもなく「チェルノブイリ原子力発電所事故」(1986)の現場である。


残りの2語…HIROSHIMA を説明する必要はないと思うが、HARRISBURG(=ハリスバーグ)って?と思う方もいらっしゃると思う。僕も判らなかった…

アメリカ合衆国の都市の名前だが、その郊外にスリーマイル島がある…と聞けば「!」ではないだろうか。

そう、スリーマイル島原子力発電所事故(1979)の現場だ。


…個々の事故の詳細は Wiki 等で検索して頂きたい。

つまり広島を含めて、「被爆地」がキーワードなのだ。


現在もその「影響」が続いているということを含めて…


オリジナル・ヴァージョンが1975年だから、スリーマイルズ・アイランドとチェルノブイリがこの曲に「変異」をもたらした…ということになるのだろうか。


♪♪


放射性物質の特性に「半減期」というものがある。

これは一定の時間で量(大雑把には質量や放射線量と思って頂いていい)が半減することなのだが…


つまり、経過時間と大きさの関係だ。


仮に、ある放射性物質の半減期が1年とする。

100あったものが1年で50になる。

50が25になるのが1年、25が12.5になるのが1年、12.5が6.25になるのが1年……


これは、数学的に言えば「2次曲線」か。


100が50になるのが1年、50が25になるのが半年ならば、ただの「直線」関係だ。2年で "0" になる。

しかし2次曲線は、限りなく "0" (一定の値)に近づいて行くが "0" になることはない…。



被害をもたらした元凶への怒り、原子力への不安…

…と、同じように思える。


決して消え去りはしない、と。



♪♪♪


ウィンズケール

スリーマイルズ・アイランド

チェルノブイリ

すべては…


♪ 警告どおり 計画どおり






「ライヴ・ヴァージョンの語り」部分は DVD:TOBW-3257/8より。

他の歌詞は CD:TOCP-70819/26 対訳/岸本礼美 (written by Hütter, Schnider, Schult)より引用しました。