前回までのあらすじ

 

マユルカ首長国との戦争に勝利し、バレアレス諸島のマヨルカ島に続きメノルカ島を手中に収めたバルセロナ伯はバルセロナに凱旋する。

 

本編

 

父の意思とバルセロナ市の大商人の願いを受けて、メノルカ島を攻略しました。直轄領が制限を超えており、先ずはこの手当をしなければなりません。

 

 

弟は既に3伯領を所有しており、これ以上の所領を与えるのは国内に私と拮抗する勢力が生まれるため、あまり望ましくないと考えました。

 

このころから時々弟との諍いが起こるようになります。しかし私の周辺の評議会のメンバーは弟の若さから来る一時の問題だとこの問題を一蹴しました。弟と言っても私と双子なのですが。しかしこのようなことも起こりました。

 

 

弟の所領、ジローナで行う祝宴に招待されました。弟は弟なりに兄弟の仲が悪くなり、バルセロナ公国が分裂することを避けようとしているのでしょうか。

 

もちろんこの招待を受けます。

 

 

この時には今後のバルセロナ公国の統治についてや、将来の西地中海への進出についても弟とじっくり話すことが出来ました。祝宴の翌日に、弟の居城で弟と一緒に朝食をとっていると、バルセロナからの早馬が門の前に到着したという連絡が。

 

使者からの親書を取り次いだ弟の宮宰が朝食の席にそれを届けます。

 

私がその親書を見ると、妻の紋章の押された封蝋がされています。それを開くと妻が2人目の子を宿したと書かれているではありませんか。私は静かな朝食の場ということも忘れ、弟に喜びも露わにこのことを伝えます。

 

弟は、多分私の普段目にすることの無いような感情の発露を目にしたからか、一瞬動作が全て止まったように見えました。その時、全く動くことの無い弟の視線が私を真っすぐ見据えていたように思えました。しかしすぐ次の瞬間、

 

『兄上、ここではバルセロナ公ではなく、そう呼びますが、おめでとうございます。次は男子が生まれると良いですな。バルセロナ公の継承者が。』

 

と殊勝なことを述べてくれました。先ほどの鋭い視線というのは、単に私の思い込みでしょう。共同統治者としての弟を信頼するべきです。血を分けた双子の兄弟です。

 

弟はこの知らせを受けて祝宴をさらに続けると言い出し、この日の夜も大勢が詰めかけた素晴らしい祝宴が催されました。

 

そして祝宴から戻り、バルセロナで日々の政務を行います。バルセロナ市の商人からの要請を受けサルデーニャ島への進出を加速さていこうというのが評議会の意見ともなっていました。かつて、バレアレス諸島への進出をしようとしていた時期には、バルセロナの大商人層が身分制議会を通じて地中海の島嶼部への進出を要請しても、評議会が様々な危険性を挙げて、それを止めるということがありましたが、バレアレス諸島の攻略に成功し、その貿易額の増大を目にした今では朝野を挙げて海外への進出を行う機運が高まっていました。その上、今のサルデーニャ島は独立した諸侯が乱立する状態で、その全島の支配も難しくありません。神聖ローマ帝国も南方でのトスカーナ公国とロンバルド公国の独立への対応で忙しく地中海の情勢には手が回らないようです。当方でのハンガリーとの紛争も抱えていました。

 

また、その独立したロンバルド公国自体が、さらにその後地中海沿岸部のジェノヴァ共和国に独立されるという混乱状態。この間隙をついてサルデーニャ島への進出を決断しました。今回も弟が指揮を執り、敵前に上陸するのではなくバルセロナ公国領となったカグリアリに上陸し、そこから北上する作戦を取ります。

 

 

兵力差は圧倒的で、最初の戦闘でアルボレア伯の居城の前で待ち構える守備兵500名に対しこちらは隊列を整えて前進し、短時間の戦闘で相手は400人以上が降伏。これを見てアルボレア伯は敗北を認め講和を求めてきます。

 

城壁の下にまで我々に攻め込まれての講和なので、そこは厳しい条件となりました。しかし所領が増えすぎていることも事実であり、現アルボレア伯の息子が私の仕官の要請に応じてくれたこともあり、しばらく宮廷にとどめておいた後、土着の貴族の方が島の統治に有用だという評議会の助言もあり、このアルボレア伯の息子を改めてバルセロナ公の臣下としてアルボレア伯に封じました。

 

この時も弟が指揮を執っていましたが、軍の指揮官が戦闘で勝利した全ての所領を手にできるわけでは無いと分かってくれていると思います。

 

そんな中、この年も暮れていく12月のある日・・・

 

廷臣何人かと連れ立って鷹狩りを行うことになりました。場所はバルセロナ郊外で、私が普段よく行く場所です。

 

宮廷司祭がいくつかの請求権の捏造を終えており、年が明けると内政にも忙しくなります。新たに獲得した土地との連絡も行わなければならず、この先の忙しさを考えると、この時が息をつける良いタイミングだと思っていました。