劇場鑑賞。

 思っていたのとはかなり違っていた。“アンダーカレント”というのは、誰の心の奥底にも常に流れていて、日常のふとした瞬間に様々な形で湧き上がったり溢れたりする、その人にもよくわからない“もう一つの情念”だと思っていた。

 だが、この作品ではそれは「秘められた過去」とほぼ同義であり、何らかの深刻なトラウマを抱えた人間だけに許された特権的な所有物のように描かれていた。別の言い方をすれば、登場人物が少しばかり「ドラマ」チック過ぎて自分の好みとはずれていたということ。

 今泉力哉監督は『愛がなんだ』(2019年)では、自分でもよくわからない自分の気持ちに翻弄される人物像を細やかに構築していたので、この作品も期待していたのだが。

 ただし映像や音楽は本当に美しい映画だった。