或る優秀なツアコンの酒による失敗話 | きままなひととき

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1995年頃の会社勤務時代の話です。

毎年欧米の自動車会社を視察する出張がありました。それは仕入先が主催で企画・募集していて、その仕入先がすっと利用してきた中堅旅行会社がありました。私の自動車会社から毎年1名参加枠があり、私が行くことになりました。他は私の自動車会社の関連メーカーからの参加で合計10人+幹事役3名の視察団となっていました。この視察は主催の仕入先が顧客を接待する要素もあり、その仕入先から幹事役で3名が同行しました。まだ昭和の余韻引きずる平成初期の時代、こうした姿が残っていました。なお、接待要素もある、とはいえ、出張費は各参加者の会社持ちで、幹事役の仕入先は、訪問先の都市での夕食等の接待をする、外出時の案内をする、という程度でした。

 

私は、訪問する先の欧州の某自動車会社で、自社の最新技術系情報システムをプレゼンすることになっており、会社での業務多忙で出張の出発日ギリギリまでプレゼンを作成していました。プレゼンは私1人だけであり、訪問団を代表する形でのプレゼンでした。みっともない内容では会社が恥をかいてしまいます、ですので、話する原稿は出張中に入念に推敲することとして、飛行機の中、ホテルで原稿の推敲の続きを行おうとしました。

 

日本から最初に米国に渡り、最初のホテルにチェックインして夕食後に、同行している旅行会社の中年男性のツアコン(ツアコンは1名のみ)が、

「米国初日の夜に、皆様をお連れしたい店がありますのでご案内します。」

というので、初日のツアコンの案内なので全員が行きました。そこは少しおしゃれなアメリカンなカントリー風のバーでした。ツアコンは色んな外国に精通しており知識も豊富で、語学も英仏独伊はもちろん、中国語などもペラペラで、行く先々の土地や交通にも精通していましたので、いろんなうんちく話を披露します。

が、原稿チェックを急ぎたいために時間を惜しむ私は、酒が飲めないこともあり、酒の勢いでうんちく話がますます盛り上がっている独演会状態ののツアコンに対して、

「原稿チェックをしたいので、私はこれで失礼したいのですが。」

と申し出たら、酔っている顔色がみるみる変わり、座った目つきで、

「話が佳境にはいっているのに中座するとは興ざめるではないか。1人でホテルに帰れ!」

と、人が変わったようにぶち切れ、私にそう言い放ちました。私の方がツアコンよりも若かったこともあり、見下したのでしょう。

幹事役3人の顔は全員一瞬で凍り付きました。なぜなら、主催の仕入先の主賓は私の会社でしたから、その相手に対してツアコンの酒に酔った暴言でしたので、仕入先のおもてなしは初日で台無しとなりました。

私は、そういわれても、酒に酔って自己陶酔し何度も似た話を繰り返すツアコンの話でしたし、原稿が気になっていましたので、文字通り寸暇を惜しんで推敲を重ねたかったので、私は、

「では、お言葉どおりに帰ります。」

と言って、席を立ちました。慌てた幹事役のスタッフがすぐに私を追いかけてきました。

「誠に申し訳ございません!!」

と何度も私に詫びていました。

「原稿が気になっていましてね、でも初めての場所なので、タクシーでホテルに帰ろうと思っていましたが、不安もありましてね。」

と、そのスタッフに話し、そのスタッフがタクシーでホテルまで同行してくれました。

私は、みんなのいる場所では言わなかったのですが、同行したスタッフには、

「酒に酔っているとはいえ、ツアコンとしてあのような発言はいかがなものでしょうか。」

と言いました。

「ごもっともです。」

とスタッフは平身低頭でした。

 

その後、欧州の自動車メーカーで、無事私はプレゼンを終えて、ほっとして、残りの日程を予定どおりこなして帰国しました。

 

ツアコンの人はシラフだと豊富な知識で訪問先への交通手段、入管での諸手続き案内やサポートなど、優秀でした。自信満々でした。

でも、酒の席での暴言は最後まで謝罪がありませんでした。酔って憶えていなかったのかもしれません。

 

帰国後しばらくして知ったのですが、接待視察を企画した仕入先は、その中堅旅行会社との契約を解除し、翌年からは別の旅行会社と契約したことがわかりました。さらにその後の話によると、その中堅会社は、長年続いた大口の契約を解除されて、人員整理をしたそうです。

 

酔っぱらっていたとはいえ、言ってはいけない暴言を客相手にぶつけたことで、仕事を失いました。その後そのツアコンがどうなったのかは、関心もなかったので、知らないままです。

 

ツアコンとして、つまり仕事がいくら優秀であっても、酒で身をつぶしたことになり、昔から言われている人生での3大失敗要因の、

飲む、打つ、買う(現在は法的に禁止されているものもあり、今は死語では、と思います)

つまり、

酒、ばくち、女

でのつまづきは、現代もそのまま通じると感じました。

 

酒での失敗は、TPOをわきまえないと、自身の死活問題になることを身近で見ましたので、そのことをふと思い出し、書いてみました。

 

ではでは。

 

 

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