マンションの、とある部屋の前。チャイムを押す国勢調査員の男性。
ぴんぽ~ん・・・。
部屋の住人は、出て来ない。
もう一回押す。
出て来ない。
二回続けて押す。
やっと出てくる。
「お~い、うるさいよ」
「ス、スミマセンっ。国勢調査の者ですが」
「何の用?」
「そろそろ調査用紙を提出して頂きたいんです」
「あ、そう」
「このマンションで提出してないの、もう、あなただけなんです」
「良かったな、あと一人じゃないか」
「そ、そうなんです!ご協力お願いします!」
「イヤ」
「えー!そんなこと言わないで下さいよ!」
「もっかい来てくれたら、出すよ」
「えー!つい2,3日前に来たばかりなのに!」
「ガンバレ」
「そういえば、前回ここに来た時は、電気のメーターが回ってるのに出て来られなかったんですよ!居留守なのかと思いましたよ!」
「決めつけちゃいけないなぁ」
「スイマセンっ」
「電気をつけたまま、長期の旅行に行ってたかもしれないじゃん」
「あ、そうだったんですか?」
「ちがうけど」
「えー!」
「長いトイレで出れなかったのかも」
「そうなんですか?」
「ちがう」
「えー!!」
「でも、そうかもしれないじゃん 相手の都合も考えてよ」
「はぁ」
「シャワー浴びてたかもしれないし、恋人と盛り上がっててスグには出られなかったのかもしれないじゃん?」
「はぁ・・・。」
「まぁ、ちがうけど」
「えー!!」
「・・・」
「・・・」
「熱が出て、寝てたんだよ。ずっと・・・。インフルエンザで」
「あ、そうなんですか!スミマセン、居留守だなんて言って!」
「って、コトかもしれないじゃん」
「えーー!!!」
「うん。ま、そういうコトだからさ、分かってよ」
「分かりませんー!!」
「オレにも色々、都合があるんだよ」
「面倒くさかっただけなんじゃ」
「ちがわない」
「えーッ!!」
「うん、その通り」
「ええー!!」
「だとしてもさ、色々考えてよ。スグに「コイツ居留守か?」なんて悪いほうに考えたらさ、世の中ギスギスするでしょ?」
「え、ええ」
「だからね、思いやってほしいの。で、オモンパカッテほしいの。俺の気持ちを、そして状況を」
「は、はい」
「優しくなってね」
「はい」
「だから、コレ・・・・来年まで待ってよ」
「ダメですーーーーっっっ!!!」
「(笑)」