シリーズ
『人間は、一夫一婦制の生物である。」←うそだよ。』
その1
その2
さてさて。
今回はいわゆる「常識」とされる感覚からずれている事例を紹介するんだけど。
(あ、いつもか^^;)
自分の社会や自分の「普通」が、他人やよその社会にとっての「普通」ではないんだよね。
「普通」や「常識」とは、なんと揺れやすいものか。
父親がたくさんいる社会。
ある調査がある。
南米のパラグアイでアチェ族の調査をしていた人類学者が、
「あなたの父親が誰か教えてください」
と321人に聞いたところ自分の父親だとした者の人数が、延べ600人以上になった。
父親が複数いるこども達は、さげずまれるどころか、自分に特別な関心を持ってくれるひとが1人だけでないということで有利になる。
こういう社会の男性は、他の男性と一緒に同じ子どもの父親になることによって父性を共有するのは、喜びこそすれ、嫉妬にかられたりすることがない。
それは、もしも自分が亡くなったとしても、残された自分自身のこどもの面倒を他の誰かが見てくれるから。
こどもの生活の保障のひとつにもなってる。
おもしろい男
親切な男
かっこいい男
力の強い男
・・・
というふうに、女性がこのひといいなぁと思う相手のもっている良いところが、こどもに伝わるように、たくさんの相手と性交渉をする。
「赤ちゃんが精子の蓄積によってつくられる」という考え方が背景にあって、この考え方はパラグアイのアチェ族だけでなく、世界各地の狩猟採集生活~初期農耕生活を送っている部族にみられる。
もちろんぼくらは、1個の卵子と1個の精子が出会って受精することをわかっているから、こどもの生物学上の父親はひとりだということを知っている。
でも、世界各地で同じような考え方がみられるということは、初期の人類の男女関係のひとつの考え方だったんだろうね。
そして、そんな考え方が出てくるということは、一夫一婦制ではなく複数の男女が関係を持つということが、ヒトという動物にとって「普通」に行われていた証拠のひとつにもなっている。
実際に、父親がたくさんいる考え方には「父性分割」という専門用語があるくらい。
男の恐怖。
生物の本能のひとつ「子孫を残したい」という気持ち。
生物学上の母親が誰かは、間違いない。
産まれてきたときに、それはわかる。
ただ、父親が誰かは本当のことはわからない。
だよね。
だって、排卵の時期ははっきりしないし、もしも特定のパートナー以外と性交渉があったら、そっちの相手のこどもかもしれないもん。
いまでこそ血液型とか遺伝子検査とかではっきりとわかるようになってきたけど。
それは、ここ数十年の話でそれまでは、本当に自分のこどもかどうかだなんて、男はわかんなかったんだよ。
自分のこどもかどうか、証明できない。
自信がない。
だから、男は自分が子孫を残せるかどうか常に怖かった。
本当に自分の子かどうか、確認するすべがなかったから。
1回でも女性が浮気をして、それで妊娠をされたら・・・。
一夫一婦制が発達してきた理由のひとつはこの「恐怖」にあるともいえる。
宗教や道徳、法律で、貞淑こそが大切であると、
何度も何度も刷り込もうとしてきたのが、農耕社会になってからの人類なんだよね。
(そして、ずっとうまくいかないから、ずっと刷り込み続ける歴史が繰り返される)
しかも特徴的なのは、女性に対する処罰や抑圧のほうが強かった。
世界各地の法律や習慣では、妻が夫以外の男性と性的関係を持った場合は夫が被害者とされるのに、夫が妻以外の女性と関係を持っても妻が被害者とはみなされないことのほうが、圧倒的の多い。
ひどい話だと、アフリカでいまだに行われている女性の割礼。
これは、生殖器の一部を切除したり、縫い付けたりするもの。
女性の性欲を低下させたり、セックスの快楽を奪ったり、はては夫が望む時以外には物理的にセックスが不可能な状態にしてしまうというもの。
これが原因で病気になったり、死んでしまうひともいる。
あ、でもね。
イギリスの大学が2005年に発表した研究結果で、
『戸籍上の父親が生物学的に父親でない確率の調査』がある。
育てた子どもが自分の子供じゃなかった人の割合なんだけど、4%。
世の父親の約25人に1人は、知らないうちに自分の子どもじゃない子どもを育ててたことになる。
ドイツだと、新生児の10%が法律上の父親のこどもでないという数字もある。
(ちなみに、ドイツでは勝手に遺伝子検査をすることが法律で禁じられている)
まぁ、男性側の恐怖も妄想ではないということなのだけど・・・
そして、これは人間に限ったことではなくて、ほとんどの動物にみられる傾向でもある。
狩猟採集時代のおおらかさから、農耕社会が始まり時代が進むにつれて、性的にどんどん不寛容になっていく。
どうしてこんなことになるかというと、それにはやっぱり理由がある。
つづく
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