家でごはんが炊けて、
炊飯器をあけた時、
ぼくはどうしても最初のごはんを食べれない。
こどもの時から積み重ねてきた習慣。
ちいさな頃に染みこんだこと。
家の空気が、そうさせるのか。
湯気をあげる炊きたての白いごはんに
しゃもじを入れた最初のひとすくいを、
自分の茶碗によそえない。
「あきちゃん、仏さんのごはんさげてきてー」
「はーい。」
こどものころ、
食事の準備ができると、
おばあちゃんや母親が台所から呼ぶ。
仏壇でチーンと音を鳴らして、
手を合わせて、
仏さんのごはんをさげて。
そして、炊きたてのごはんをよそって、
またお供えして、
チーンと鳴らして手を合わす。
一番最初のごはんは、
仏さんに。
別に信仰も、
信心もあるわけではないけれど、
身についた習慣。
炊きたての最初のごはんを、
一人暮らしの時は、普通に食べてたのに。
家に帰ると、やっぱり食べれない。
最初のごはんは、仏さんに。
こどものころは、
なにもわからず手を合わせてたけど、
おじいちゃんやおばあちゃんが加わると
なんとなくわかるね。
このひとたちがいたから、
ぼくはいる。
そして、
こどものころからの、
ひとつひとつのページの積み重ねが
いまのぼく。