「多数者の専制」について | 司法書士 荒谷直樹のブログ

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埼玉県所沢市の司法書士フラワー総合事務所代表。ジャンル問わず「本音」で書いているブログです。法律&メンタル&個人的戯言、などなど。司法書士としては相続登記~訴訟支援まで、幅広く相談を受けています。話をよく聴くタイプの司法書士です(^^)

  現代の民主主義体制は、歴史的に異なる起源を持つ複数の要素が混在している。そして、記録が残っている限りで歴史上最も古い民主主義体制は、古代ギリシアにあるとされている。

 

 アテネがその代表である。紀元前5世紀が全盛期であった。古代の民主主義は、市民から構成される民会が政策決定を担うところに特徴があり、民会に参加するメンバーを選挙や抽選などで限定していなかったことから、直接民主主義と言われている。

 

 この古代の直接民主主義は、古代ギリシアの都市国家が衰亡して以降、ほとんど採用されなくなった。この理由が興味深い。理由は大きく分けて2つあった。

 

 1つは、市民(有権者)であれば誰でも民会に参加できるのであれば、参加が可能な民会の開催場所や参加者の交通手段を確保しなければならなかったが、小規模な都市以外においては困難だったためである。

 

 もう1つの理由は、市民に政策決定を委ねることは間違った判断につながると考えられたことである。古代ギリシア隋一の繁栄を誇ったアテネが、ペロポネソス戦争でライバルのスパルタに敗れたこと、さらにはアレクサンドロス大王率いるペルシアの配下に入って独立を失ったこと、その過程で哲学者ソクラテスをはじめ多くの優れた人物を死刑や追放に処したことなどは、文献を通じて後世の人々に受け継がれ、民主主義は適切な政策選択を行うことが難しい体制だと考えられるようになったのである。

 

 民主主義のデメリットである。今の日本の議会制民主主義にそのままダイレクトに妥当するかはわからないが、十分に参考にすべき内容だと思う。「市民に政策決定を委ねることは間違った判断につながると考えられていた」という言葉は、今の高市政権を中身もロクに検討することなく、熱狂的に支持してしまうような日本国民にぶつけてやりたい言葉である。

 

 後年、アメリカの建国者の1人で憲法制定に尽力したジェイムズ・マディソンや、「アメリカのデモクラシー」を書いたフランス貴族のアレクシア・トクヴィルが「多数者の専制」として定式化したのも、民主主義体制が持つこのような側面であった。

 

 この側面は、現代でも妥当すると考える。アメリカなど、民主主義国家であるはずだが、トランプが暴走して世界の秩序まで歪んできているではないか。今度の日本の衆院選はどうなるか。たいへん興味がある。わたしの願望は、自民党が過半数どころか、滅茶苦茶に議席を減らしまくって与党から転落し、維新や他党と手を組んだとしても、少数与党の座さえ手に入らない超想定外の事態である。後世の政治家が高市政権や高市身勝手解散を「他山の石」として活用できるような解散総選挙になればいいと思っている。支持率が高いだけで、国民のことなど顧みない調子こいた政権の行く末はこういう惨状になるのだ、という悪しき見本になってほしいと願っている。