いつもありがとうございます!アクセス数がさらに増えて、執筆意欲がさらに上がってます。またコメントを多数頂いてますが、一つ一つお答えする時間がなく申し訳ありません。コメントは丁寧に拝読させて頂いてますので、引き続き、書き込みをお願い致します!

※登場人物、学校名、ストーリーはフィクションです。

 

秋の大会が終わり、僕は新人賞を受賞した。高校時代は県大会ベスト4で敗退、決勝の晴れ舞台に立てずに悔し涙を流したときと違い、晴れやかな気持ちで一杯だった。

大会強化期間も終わり、授業優先の日々となった。いつもは午後の授業そっちのけで、空手の稽古に出ていたが、単位も危なくなるので、割と真面目に授業に出ており、今日も学食で昼食を食べてから、3次限目の授業に向かう途中だった。

 

そういえば、以前の池田達の飲み会はどうだったのだろう。翌日、様子を聞いてはみたものの、ボチボチだよと、はぐらかされるばかり。池田との付き合いも半年が過ぎると、結構したたかだなと思うところが見え隠れするところがあった。あの三茶会議は何だったのだろう。。。

 

うちの大学は、学食が二階にあるため、階段を下りてエントランスを出ようとした瞬間、僕の心臓は止まりそうになった。

 

(あっ、ナカミ―だ!)

 

ただでさえ、普段は学内では見かけず、しかもいつもは鈴木さんと二人で歩いているのに、今日はひとりで歩いているナカミ―と学食の入り口ですれ違ったのだ。

 

「あっ、ナカミ―!」

「あっ、木村くん!」

 

普段は鈴木さんと二人組なのに、なんで今日は一人なんだろう?この時間からどうして学食に一人で向かうんだろう?もしかして午後は授業がないのかな?授業はあるけど休むのか? それとも用事があるから、この後すぐに帰るのか?

 

すれ違う、わずか一瞬の間に色々と考えがよぎった。。。。このわずか1、2秒の間、行き交う回りの人にしてみれば、なんのこともない1、2秒が2人の間に色々な思いが交錯した時だったと思う。

 

(わっ、木村くんだ!めっちゃ会いたかった!しかも今日はひとりだ!でも、これから学食出るということは、授業に行くのかな。。。私、この後、授業欠席してもいいかも。)

 

(えー、ナカミ―一人だ!鈴木さんもいないし。しかも今日のミニスカートとブーツ、超かわいい!。でも、この後、授業に行ってしまうのかな。。。。)

 

「木村君、これから授業?」

「うん、授業。。。でも、、、、」

「でも?」

「必修じゃないから、休んでもいいんだ。ナカミ―は?」

「私も授業、、、でも、、、」

「でも?」

「私も、出ても出なくてもいいからどうしようかなと。」

「えっ、そうなの?」

 

すれ違った瞬間が1秒。言葉を交わした時間が10秒。このわずかな時間が、30分にも1時間にも長い時のような感覚に襲われた。

そして、この一瞬で僕の中に色々なことがフラッシュバックした。

 

入学直後、予備校時代にフラれた水口さんのことで、傷心していたこと。その後、ナカミ―と出会って、少し気持ちが軽くなったこと。そして、今、この瞬間、ナカミ―と二人きりになった瞬間、一気に高まる高揚感と、予備校時代にフラれた時の恐怖感が同時に襲っていた。

 

「お茶に誘え、今しかない」

「彼女はもうとっくに他の男に行っているかもしれない。ひょっとしたら池田かもしれない。もうフラれたくない。怖い。」

「他にいつチャンスがあるんだ、今しかないだろ」

「いや、また今度約束すればいい」

「今度はない、今だ」

「攻めろ!」

「怖い。無理だ」

 

自分の中で、これくらいの葛藤はあっただろう。このすれ違った瞬間、かわした言葉でわずか二言、三言の間。

 

でも、この時、僕は一瞬にして霧が晴れるような気持ちになった。 試合前に対戦相手と対峙した瞬間と同じような覚悟だ。

空手では二つの相反する言葉があり、いずれにしても、護身術として発達する空手ではあるが、

 

「空手に先手無し」

「攻撃こそ最大の防御なり」

 

この時、私が試合前に言い聞かせる言葉は、

 

「攻撃こそ最大の防御なり」

 

気持ちは一瞬にして整った。そして、

 

「ナカミ―、俺、午後の授業休んで、ナカミ―とお茶したいんだけど、一緒にいかない?」

 

言えた。軽い調子じゃなくて、真面目に言えた。少し、自分でも照れ臭かったけど、ナカミ―とお茶したいと言えた。

 

「えっ、これから?」

 

(えっ、その反応だめってこと? マジか?やっぱダメか。。。)

 

その一瞬が、さらに長く感じたが、彼女はちょっと考えてから、

 

「いいよ。行こう!」

 

(やったー!ついに二人きりで話せる!)

 

こうして、僕はついにナカミ―と二人でお話しができる時間を得ることができたのだった。

 

二人で渋谷のジョイタイムに向かって歩きだしたとき、もう自分の周りの景色に何があるか全く覚えていない。学内を歩いているときでも、必ず誰かに会う気がしたが、今日は全く人の動きが目に入らない。隣に並んで歩いているかわいらしいナカミ―だけが飛び込んでくる最高の時間だった。