脱水症状気味のオレは、駅前のコンビニでスポーツドリンクを買おうと決めた。
巨大冷蔵庫をふと見やると、アクエリアス2Lと『ポカリスエット』の900mlのボトルが並べてある。そして、ふと想いだしたのだ……。
10数年前、家族の一員だった柴犬の『夢』が急逝し、オレは声を上げて泣いた。
身近な人の葬式で、涙することもなかったオレは、自分のことを「まっとうな人間か否か」ずっと疑って生きていた。
夢は、命と引き換えに『オレも人間だよ』と、優しく教えてくれたのだ…。
そして、イヌの居ない生活が始まり……
寂しさに『2ヵ月』ともたなかったオレの家は、大枚17万円をはたいて、黒いラブラドールの子犬を迎え入れたのだ。
子犬は『クラウド』言わずと知れた、ファイナルファンタジーの主人公である。
あのクラウドのように、逞(たくま)しく、強いイヌになれ!
そう願って、オレが名付けたのだが……
夢の死を悲しんでいるヒマもなく、一家はあの「あほ犬」(今だからこそ言える)の世話に明け暮れた。
『ポカリスエット』は、クラウドが子犬の頃…毎日飲んでいたモノだ。
本格的なドッグフードは、2週間目になってから食べさせるので、しばらくはポカリスエットと、大手ドッグショップで聞いていたのに、『5日もしないうちに』メシを喰い始め…
オレのひざに載っていた子犬はたちまち40キロ以上の大型犬に化けてしまった。
パンが大好きで、袋ごと喰おうとしたり、
鍋に入った味噌汁を、盗みのみしたり
入院したと聞いて、大人しくなるかと思いきや、『心臓が止まるまで』メシを喰い、そして天に帰ったクラウド。
ポカリスエットは、お前のせいで『思い出の味』がするよ……。
