オレの枕元には、かつて一緒に暮らしていた『シェパード』の写真が
画鋲で留めてある。コンクリブロックの上にアタマを乗せ、まったりしている
ところを写真で撮ったのだが、カメラを向けたオレに眼だけをキョロリっと
向けて「んー…何よ。お兄ちゃん?」(彼女は雌だったので、イヌの妹だ)
なんて顔をしている。
妹の名前は「ボーダー」といった。長野県からわざわざ連れてきたのだ。
仔犬のころに。小学校6年の頃にウチに来て……浪人をしているときに、
目を離した隙を見て、オレの昼飯の弁当をひっくり返し「卵焼き」を奪って逃げた。
そんな愛犬ボーダーは、オレが東京の大学に
足繁く通っているころに……ひっそりと15歳の生涯を終えた。
たしか、あれは春の合宿の頃だったよなぁ……
オレには実感が湧かないのだ…イヌの妹の死が。しかしこの写真を見る
たびに、オレの手を鼻面ですくい上げるようにして「ポン」とアタマに乗せ、
「いいこ、いいこして…。」とねだる姿は心に深く焼き付いているのだ。
(鷺沢さん、貴女がはからずもこの世に置いて行った愛犬コマとは
どんな絆で結ばれていたんですか……。
5年前、燃え尽き症候群を訴え…自分の家のトイレから、
この世を去ったとき、貴女は愛犬を残して旅立ったんですよね……。
今でも多くの人が、貴女の命日に悲しみや寂しさを訴えていますよ。
僕もね、その一人です。
今日、なんとなく貴女のことを書きたくなり、ホームページを観て、
愛犬コマの死を知り、また悲しみや寂しさといった感情が僕の中で
渦を巻いているようです。
僕が目覚めたとき、そこがあの世であっても…多分しばらくは、誰も
僕の死には気付いてくれないでしょう。……まぁ、それは仕方のないこと
あの世で、愛犬との久しぶりの再会に貴女は、きっと
悲しいながらも喜んでいるのでしょうね)
オレはまだ、くたばるわけにはいかない。この世に残しているもの
「未練」だの「欲」だのが、山のようにある。
願わくば死ぬ時には誰かに傍にいてもらいたい。それが素敵な女性なら
何も言うことなどないけれど……。