家に帰っても寒い…。寒さが体に沁みる……。
数年前は、結婚した相手と黒いラブラドールが一緒に
お帰りと言ってくれた。そんな時代もあったが…まるでマッチ売りの
少女の想い描いた夢のごとく……『儚く…消えた…』
帰りの電車で、ふと思い出したのだ……破れたままの約束を。
「立志社会学習」だったと思う。中学生の生徒を「2.3日、会社や事業所
つまり、スーパーやコンビニなどで働かせて社会勉強させる」
という行事があったが…その最終日に、働いている様子を
写真撮影に行った先の『幼稚園』でのことだった。
ちょうど、園長先生が来たので挨拶し撮影の許可をいただく。
その直後だった、大勢の子共たちがオレの前にやってきたのは。
そして、無邪気に問いかけた。
「おじさん…だれのパパ?」
『いや~パパじゃないんだな~……ハハ』
そうだよな……。
人生の選択肢を順調に進んでいるのなら…
「オレの歳ならこんな子供がいてもおかしくないんだよな…」
どうして、今を生きているのだろう…?
そんなことを一瞬考えたとき、一人の子が
「タッチしよー」と言ってきたのだ。何だろう……?
「あのねー、○○と××くんが10かぞえるあいだににげるの。
そして、おっかけてせなかにタッチしたらかち。」
あ、いわゆる鬼ごっこか。間違っても『リアル鬼ごっこ』などと
言ってはいけない。
子供たちの背丈は、オレの半分もない……。その背中を
追っかけるオレ。子供たちをひっかけて転ばせないようにしつつ
『大人げないフェイント』まで使って○○くんの背中をそっと
手でタッチした。
「つかまっちゃったぁ…」と無邪気に笑う子供。こんな笑顔をみたのは
久しぶりだったはずだ。そしてその子に言われた。
「ねぇ?…明日も来てくれる?」辛い現実をオレはどう告げたら
いいのだろうか……。上手い言葉は出てこなかった。
『明日は無理だよ…出かけなくちゃならない……。』嘘が下手だ。
教卓に黒板、そして目の前の40名近い生徒の姿が思い浮かぶ。
「じゃあ、こんど来たとき…また、タッチしよー!」笑顔に負けたオレは、
『うん。』と、果たせもしない約束をしてしまった……。
握手をして「ばいばーい!」と子供が手を振る。
オレも手を振って少しだけ足早に……その幼稚園を去った。
あれから月日は随分と流れた……。
一緒に遊んだ子供は、もうオレを忘れただろうか。
それとも、「楽しかった思い出のひとつ」にオレのことを入れて
くれているだろうか?
いつか…どこかで…元気で…逢えるといい。