力技は、好きではない…しかし、やらねばならぬ時はあるのだ。
ある男子生徒が、校則に違反し…話を聞こうとするのだが、「うるせぇ!」「消えろ!」と暴言が返ってくる。
相方のベテランの女の先生が諭すように話しても、暴言を吐き続けて逃げようとする。
オレの怒りが爆発した。
『待てや、コラ!!』と体ごとぶつかり、壁に押しつけ、逃げようとする。ヤツを捕らえた。
ここで、ヤツを見逃してしまえば…指導の機会は永久に失われる。
負けてたまるか!!
『自分が悪いことをしたのに、その態度は何だ!』
暴れる生徒の、学ランの左腕をつかむ。ヤツは長いツメを立てて…
オレの左手をツメで切り裂いてくれた。皮膚が剥がれ落ち…血がしたたり落ちる。
結局、些細な校則違反が…対教師暴力にまで発展し『保護者呼び出し』にまで至ってしまった…。
(手のケガで『傷害罪』を訴えれば認められる。しかし、ヤツには鑑別という傷を残すことになる。まだ、赦せる余地のある生徒だから…はなっからその気はなかった)
保護者の前でも、最初は、反抗の気配を見せていたヤツも、
帰るときには…すっかり憑き物が落ちたように反省して謝罪してくれた。
帰り際、オレはヤツと握手をした。
そしてオレは言った。
『長くは、オレはいられねぇんだよ…だから、仲良くやろうぜ♪』
うん!とアイツは返事をした。
信じていい、快い笑顔だった。