うしおととら、というマンガがある。
主人公の中学生うしおが、偶然家の蔵で
400年もの間「とら」という妖怪に突き刺さっていた
霊槍・獣の槍でもって
化け物退治をするという話だ。
そんな中、こんな話があった。
クリスマス、うしおはご馳走やら、ケーキを買いに
町に出かけるのだが、
同じ頃、貧乏な兄妹でクリスマスのご馳走なんて
夢のような話…という二人がいた。
幼い兄は、都市伝説のお金を投げ込むと百倍にして
渡してくれる「穴ぼこさん」を信じ、50円玉を
投げ込むのだが…
「銭やるよぉ……代わりにおまえの命よこせぇ…。」
相手は悪い妖怪だったのだ。
子供の命が!と思った瞬間、「ギャー!!」と
悲鳴をあげる悪い妖怪。そして脳天から深々と
「獣の槍」が突き刺さっている。
「槍が鳴ったからなぁ…一体何があったんだ?」
うしおだ。
子供は、家で妹が待っていること、ご馳走もないほど
お金のないことなどを話した。
それを聞いたうしおは手に持った、
自分が食べるつもりだったご馳走や
ケーキの入った大きな袋を
幼い兄に、ぎゅっと押し付けるように手渡すのだ。
「話し聞いて、お前にやりたくなったからやる!」と。
もっとも、ラストはうしおの家の寺の前で、幼なじみの
ガールフレンドがご馳走にケーキ用意して
うしおの帰りを待っているのだが……。
これを読んだとき、オレは間違いなく少年だった。
そして10数年の歳月が流れた。
オレがとある、私立高校で半年ばかり勤めたことは
前に話したと思う。
春先のことだったはずだ。
インフルエンザが大流行し、クラスの半数が欠席と
いう状況だった最中、オレは昼飯前に職員室に
戻ってきた。すると一人の生徒がなにやら
うろうろと、職員室のそばで困っているようだ。
ソイツは坊主頭で野球部員だということは
一目瞭然だった。野球部員で『寮生』には特大の
弁当が支給される。ソイツの分の弁当がないのだ。
オレは事務にかけ合って、
そいつの弁当について聞いた。そしたら
監督らしきバカ教師が出てきて、こう抜かした。
インフルエンザで休んどった者の「弁当」まで
面倒見てやるヒマなんかないわ!バカが。
生徒は半ば呆然として、
そして落胆してその場を去った。
怒りの収まらなかったのはオレだ。コイツは
この後、激しい練習をメシ抜きでやらなきゃならない。
しかも、監督たるものが好きで病気に罹ったわけでも
ないのに、「知らん」とはそれでも教育者か!!
オレは、薄い財布を取り出し、1,000円を出すと
ソイツの手に渡した。昼休みが終わるまであと15分
ってとこだろう。
「いいんですか、先生。オレ、先生のこと知らんのに!」
「構わん、こいつで食いたいだけ食って来い!
オレは、ああいう教師が死ぬほど赦せないし、ましてや
腹減ったままだったら、練習にも集中できん、行け!」
ソイツは何度も礼を言うと、食堂へと駆けて行った。
翌日、改めて頭を下げられた。
たいしたこっちゃないよ。オレも「うしお」と同じことを
しただけなんだから。