席を立つ前より幾分血色が戻った旦那は「ごめんね……
話しを中断させてしまって」
そう言いながら正座し直した
「気持ち悪くなったのは
風邪の影響ですか？」
「違うと思います……
食欲はないけど熱は下がったし
寒気とかもないので」
「話しを聞けそうになければ遠慮なく
もうベッドで休んでもらって構いません」
「いえ、大丈夫です」
「そうですか？
それなら続けますが……
昨日、話を聞いた時に私が思っていた事は
先ほど伝えた通りです
ただ、本来の私ならば
不倫者がアナタでないならば
アナタに話した所は
1番の蔑みにはならず
別な事になります
それがわかっていて
アナタが最初に驚いた表情を見せたとは
私にはとても思えませんけど
一応聞きます
どんな答えを予想して
アナタは驚いたのですか？」
「自分は、昨日正直に気持ちを話したので
その事を信じてくれるか
そこが1番気になっていて
Masakiさんも
その答えをくれるものと思っていました
勿論蔑まれて当然の事をしたので
言われて当然と頭ではわかっているのですが
予想していた答えと違い驚いてしまったのと同時に
Masakiさんの目が本心を語っていると
わかっただけに落ち込み
自分がしたことが
自分の事が気持ち悪くなって
考えれば考える程
だんだんお腹が痛くなってきました
今も頭と気持ちが追いつかず
頭が真っ白になってます」
「予想通りですね
そうだろうなとは思っていましたが……
まず、私がどれ程、不倫が許せないかキライな事か
結婚前も結婚後も何度も
話してきたのに
何の躊躇もなく不倫をした
アナタの事など
アナタの言葉など
信じられるワケがないです
ではなぜ
愚問愚答とわかっていながら聞いたのか……
それは、アナタの事を見えていなかった私が
今こそしっかり見ようとすれば
嘘や真実が見えるのか？
私にまだ人間性を見抜ける力は残っているのか？
1種の賭けに似たものから聞いたのです
今、この瞬間もそれは変わりません
そして、見抜けないならば
今の私では職務を全うする自信がないので
今後の採用面接は別の誰かに
任せようとさえ思っている位です」
「……Masakiさんは
見抜けていたと思います、昔も今も……
それには理由がありますが
今言うのは差し控えます……
本当に何もかもごめんなさい……
それしか言えなくてごめんなさい……」
「アナタは蔑まれて当然と言いましたが
アナタの自覚しているレベルと
私が思っているレベルでは段違いだと思いますよ
私がなぜ、他の人と違う所で蔑んでいるのか？
それは、昨夜も言いましたが
昨夜も言いましたがアナタがオレ様気取りで
自惚れた舐め腐った考えの持ち主だからです
そんな人に、いくら私が
他所の家庭を壊す事がどれ程罪深いのか
子供の心と未来にどれ程、傷をつける事なのか
説明したところで他人の痛みなど
想像もできないからです
だからアナタ自身の事で
説明すれば少しは痛みが想像ができるかと
思いそのレベルで話しています
アナタが自己中なオレ様ってだけなら
自分の立場を悪くし
努力も功績も失うのは
何よりも1番
許せない事だと思いますが……
実際は、それすらもわからない
頭の悪いただの自己中男という事です
そんな罪を犯した男の妻という事で
加害者家族になったような気分になり
仕事がなければ、外に出たくない心境です
人に会ってもこれまで
笑顔で挨拶できていたのに
まるで自分が後ろ指さされているような
気分になり
逃げ帰りたくなる心境です
自分が自らヤラカシタ事なら
当然の報いだと受け入れますが
アナタが自らヤラカシタ事に
なぜ私がこんな心境にならなければ
いけないのですか？
それも私がこの世で1番キライな
1番許せない不倫を自分がするはずもなく
実際にしてもいないのに
私は加害者家族にサレた
この気持ちがわかるというのですか？
自己中なアナタにわかるはずがない！
だから簡単に謝らないでもらえますか」
「……」
唯一言える
ごめんなさいが
言えなくなった旦那は
当然、黙ったまま肩を竦めていた