レーザーの切れ味?
ザックリ!分かりやすくするため、
レーザーと刃物の切れ味を比較して考えてみます。
まず、刃物にもレーザーにも「素材」があります。
刃物の素材は、「鋼(はがね)」です。
切れ味良い刃物には、良質の鋼が必要です。
鉄(Fe)は、自然界では純粋な鉄としては存在せず、
採掘される天然鉄鉱石は、炭素(C)、珪素(Si)マンガン(Mn)りん(P)、硫黄(S)
などを含み、その不純物の含有量と組成により、鉱山で産出される鋼の質が決まります。
中でも、炭素の含有量が重要で、炭素が多くなると鉄は硬くなるのですが、
反面、粘りがなくなりもろくなります。
刃物の切れ味は、
鋼の「硬さ」と「粘り」がポイントで、
そのバランスは刀工の技により調節されます。
ちなみに、鋼に人工的にクロムやニッケルを混ぜると、
錆びない鉄、ステンレス鋼(合金)を作ることができます。
鋼は不純物の種類と比率で、質を調整するのです。
レーザーも
素材である「レーザー媒体」が
レーザー特有の「波長」の元となり、
ちょっと強引ですが、刃物の「鋼」に相当します。
特にシミ治療のレーザーは、
素材の差が切れ味に影響を与えます。
面白いのは、しみレーザーの素材も、
刃物と同じ鉱石から作られることです。
代表的な「しみ治療レーザー」のレーザー媒体
1.ルビー
2.アレキサンドライト
3.YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)
は、天然鉱石ないし人工の固体結晶(宝石)です。
さらに類似するのは、
刃物で鋼に異分子を添加して性質を変えるように、
レーザーも純粋な鉱石の分子で発振されるのではなく、
クロムイオンやネオジウムイオンなどの異分子を添加することで
レーザーを発振します。(レーザーではドープと言います)
刃物もレーザーも
鉱石の分子の結合状態やその形態が、
硬さや粘り、発振する光の波長に影響するのです。
さて、3つの鉱石から出来たレーザー
1.Qスイッチルビーレーザー(694nm)
2.Qスイッチアレキサンドライトレーザー(755nm)
3.QスイッチNd:YAGレーザー(1064nm)
手前から、QYAG、QALEX、QRUBY
最近はこの3つのレーザーの使い分けを楽しめるようになりました。
鋼の「硬さ」と「粘り」に類似するのが、
しみのレーザーでは、波長の性質
「メラニンに対する吸収率」と「レーザーの深達度」です。
メラニン(しみ)に良く反応する波長は、
ルビー>アレキサンドライト>YAGとなり、
ルビーが最も切れ味が良いレーザーとなります。
メラニンに対する各波長の吸収率
対して、レーザーが到達する深さでは、
ルビー<アレキサンドライト<YAGとなります。
レーザーの皮膚への深達度
同じ刃物でも、剃刀と包丁では、違う切れ味が要求されます。
包丁でも、魚、肉、果物と切る対象で使い分けされるように、
レーザーも対象となるシミの性質で使い分けすることができます。
レーザーにはもっと複雑な要件もありますが、
今回は、しみ治療のレーザーを素材による切れ味で比較してみました。
ところで、鉱物を刃物やレーザーにしていく過程は、
異分子を混合して、なにやら活性化するのですが、
人の組織も似ていると思いませんか?
企業や組織も同族経営や純血では、
いずれ、組織の弾力、活性化、自浄能力が欠け、衰退していきます。
多少の異分子を受け入れ、新しい血を入れることも、
企業、組織、ひいては国家の存続に必要なことなのです。