朝はけっこう本降りだったが、今はかなり落ち着いているようだ。朝家を出る前は、おそらくぱらぱらとした小雨くらいだろうと思っていたのだが、ドアを開けたとたん出鼻をくじかれた思いだった。大雨というほどではないが、大きめの雨粒が風に吹かれて少し斜めの線を空中に描き、暗い雨空から音をたてて落ちていた。


幼稚園へ向かう小さな子供達は、皆黄色やピンクの可愛らしい雨合羽を着て、同じく可愛らしい色の長靴を履き、小さな傘を手に母親に手を引かれて歩いていた。やはり小さな子供の場合は地面からの距離が近いせいで雨水の跳ね返りの影響が大人より大きいのだろう、私が見た子供達は皆そうした恰好をしていた。よくよく考えてみれば当然のことで、我々大人でも少々雨足の強いときには膝から下はびっしょりと濡れてしまうものなのだから、我々の膝の高さがお腹や胸辺りになる子供達にとっては、多少雨足が強いくらいの雨でも、我々大人が大雨と感じるくらいのものと同じなのだ。そう考えれば、何もこれくらいでと思われるような雨であっても、そうした完全防備を整えるのは当然のことだ。


そうした雨具を着せていたためなのか、はたまた単に歩道に水溜まりができて足場が悪いせいか、その子供達を連れた母親達は、皆普段よりせかせかと忙しそうに見えた。私は詳しくは知らないが、おそらく幼稚園にも何時に着かなければならないといったような時間があるのだろう。どうやら今朝は普段よりいくらか遅れているように見える。しかし、そうした母親の大変さなどどこ吹く風といった表情で、子供の方はわざと水溜まりの中に入って歩いたり、持っている傘で遊んだりしている。「ほら、ちゃんと傘さしてよ!」「もう、ちゃんと前見て歩いて!」「ちょっと、人来てるから端っこよって!」など母親は大変な騒ぎようである。しかし、子供の方はそうした言葉など耳にも入らない様子で母親に制止されるまで喜々としてそれを続けている。その様子は母親には大変申し訳ない言い草だが何とも滑稽で可笑しく、まるで私には夫婦漫才のように見えた。間違いなく下手な芸人の芸よりも数段面白く、毒のないそのやり取りは心の中にほくほくとした温かいものを起こさせた。




もう今日は雨は降らないらしい。すっかり雨は上がってしまった。まぁ、降ったら降ったでこうした楽しみもあるのでとくに苦とも思わない。雨もまた楽しいものだ。