暑い。今年は明日7月24日が土用の丑の日。暑さで朦朧とした頭でも気になったので調べてみる。土用というのは立春、立夏、立秋、立冬までの18日間を指すそうだ。つまりは土用とは季節の変わり目のことであり年4回ある。今年の立秋は8/7で、その18日前が7/24。あと18日で立秋だぞ、と言っても秋の気配なんて今年もまだまだ来ないに決まっている。そして丑の日は十二支を使った十二周期の数え方で、12日ごとに巡ってくるから、その18日間のうちの丑の日がそれにあたる。言葉遊びが好きだった昔の人は「う」のつく物を食べましょうということで、うどんや梅干し等を食べていたそうだが、その流れで鰻も食べたとか。更には平賀源内が冬の商売だった鰻屋の相談を受けてうなぎのキャンペーンを夏の疲れを取るために土用の丑の日に行うようアドバイスしたのがはじまりという説もあるそうだ。


いきなり話が横道に逸れた。

スウェーデンのカー(密室ミステリの王ディクスン・カーのこと)、ヤーン・エクストレムの「ウナギの罠」という傑作が扶桑社ミステリー文庫で出た。ウナギはスウェーデン料理の食材にも使われるそうだ。話によると、ぶつ切りにして焼くので蒲焼しか知らない日本人には脂っぽいらしい。ヨーロッパでは食べる国が多い。以前韓国料理屋で食べたことがあるが、そいつもぶつ切り丸焼きで味気ないことこの上なかった。オーストラリアやカナダも食べるが、蒲焼にする日本料理が外国人観光客に絶賛されるのも頷ける。しかし言いたかったのはそんな話ではない!



現場の状況がサイズ入りのイラストで描いてあるなんて、これぞ本格探偵小説!

ウナギを捕まえるための仕掛け罠である小部屋の中で 地主の死体が見つかった。金と権力に物を言わせる地主には村中のほとんどの人に殺す動機がある。入口には南京錠、遺体にはウナギが巻き付いていた。ドゥレル警部が捜査を進めるうちに、残り100ページくらいでこの罠の小部屋が合鍵のない南京錠に閉ざされた密室であることに気づく。絡まる人間関係、謎が謎を呼ぶ不可能犯罪。更には厩舎が放火された。火事が収まったその現場でドゥレル警部は謎解きを始める。犯人に語りかけるように。警部、お見事!いつ気づいたんだ?!

とんでもないものがとんでもない伏線になっているのだ。久しぶりに本格らしい本格を読みました。エクストレムが「スウェーデンのカー」と言われるきっかけとなった小説というだけあって納得の傑作です。


ヤーン・エクストレムといえば幻の作家と言ってよいのではなかろうか。著作は創元推理文庫の「誕生パーティの17人」くらいしか思い浮かばないが、今やそれすら絶版である。スウェーデンといえばマイ・シューヴァルとペール・ヴァールーのマルティン・ベックシリーズから、スティーグ・ラーソンのミレニアムまで質の高さは間違いない。更にはヴァランダーシリーズのヘニング・マンケルや「許されざる者」のレイフGWペーションなどもいますね。意外と層が厚い。



ご飯が見えない贅沢

ということで、話を元に戻そう。家の近くに美味しい鰻屋が3軒ある。創業1835年のH、創業1910年のI、そして創業2022年のYと、それぞれ100年違いだ。HとIはミシュランにも載ったことがある名店で、うな重の上がH4,300円、Iで5,900円。そしてYは夫婦が始めたリーズナブルな新店で上が2,400円。今日は贅沢してYで「極上」をテイクアウトで食べる。暑さで脳がスパークしてもIやHの極上クラスは思いつかない。なにしろ、うな重の鰻が2匹なのだ。柔らかく、でも外が少しパリッとしててもうたまらない。でもね、こんな食べ方をするとただただご飯をおかわりしたくなるのです!どうせ暑さボケで贅沢するなら上を2個食べるべきだったか!