タニス・リーといえばダークファンタジーの女王と言われる著名な作家で、パラディスの秘録シリーズが最初角川ホラー文庫から出たときマニアは小躍りしたものである。しかし本屋で立ち読みしてみると文章がクラシックでゴシック小説風で読みづらい。だから後回しにしていたが、10年くらい前に創元推理文庫から出たので、それもカバーデザインや帯のコピーに惹かれて買ってしまった。しかし、ページをめくると変わらずゴシック小説風の文章である。何度か出だしを読んだが頭に入らず、それでまた部屋の積読コーナーに長らく埋もれていた一冊。とはいえ闇の女王、腰を据えて丁寧に読めば面白いことこの上ない。


 

 



頽廃と背徳の都パラディスを舞台にした中編3篇から成る「堕ちたる者の書」。逃げ惑う男から詩人がもらった血のように赤いスカラベの指輪から始まる吸血譚「紅に染められ」、美貌の役者が魅入られた魔女ティモニーとは‥「青の帝国」、そして傑作「黃の殺意」。この「黃の殺意」だけでも読んでほしい!


義父に冷たく扱われ強姦までされた20歳の美しいジュアニーヌは義兄弟にも襲われそうになると、反撃して義弟を殺して家出する。唯一仲の良かった義弟ピエールが画家の修行をしているパラディスへ。しかしピエールは昔のピエールではなかった。尼僧院へ逃げ込んだジュニアーヌは、昼は尼僧院の雑用をするが夜になると少年の姿になってゴロツキたちを率いて悪行のかぎりを尽す。悪魔崇拝の話だ。


 

 



裏切られ失意のジュニアーヌと夜に姿を変える少年ジュアンの対比がはっきりと描かれ、ジュニアーヌが悲しみゆえに心のバランスを崩しているのかと思いきや、すべてを見通す悪魔が見え隠れする。この地には男と女の違いはない。どちらもカードの表裏でしかない。聖なる神と邪なる悪魔も同様に表と裏。確かなものは何ひとつない、すべてがあやふやで危ういパラディスの空気感がよく描かれている。


グルメバーガーを食べに、板橋の大山にあるジューシーオールスターズハングリーヘブンに行ってきました。パンズがカリカリに焦がしてある。紙に包んで潰して食べるのですが肉汁が凄いので、それをポテトにかけて二度愉しむ。

パラディスか?ヘブンか?ハンバーガーならヘブンでしょ!