ホレス・マッコイは主に戦前に活躍したアメリカの作家だ。愛読書だったミステリマガジンやEQといったミステリ雑誌に掲載されていた短編が印象的で、ハヤカワ・ミステリから出てた「明日に別れの接吻を」という犯罪小説も面白かった記憶がある。細かいことは覚えてないが登場人物が魅力的で、展開が映画を観るようだ。そして驚くことに今、マッコイの新刊である。


地方紙の記者マイク・ドーランは真実を暴く報道よりも広告収入を重視して忖度する会社の体制に怒り編集長と喧嘩して辞職。自ら雑誌を創刊して告発記事を次々と発表、大きな評判になる。しかし大手新聞社からの圧力、資金難、町の有力者からの嫌がらせなど多難が続く。政治的信念もなくただ倫理感だけで怒りを爆発させるドーランは抑制が効かずどんどん突き進む。しかし社会が腐り切っているのか、目指すゴールを持たないドーランが無謀なのか。


ドーランは不正に対してやみくもに怒りをぶつける。フェアじゃないことに爆発させる怒りは仲間に、普段嫌っている共産主義者と同じだと揶揄されもする。


 

 



この怒りはどこから出てくるのか。ドーランは自分の育った環境に不満がある。その歪みが歯止めの効かない怒りを暴走させる。その怒りは死をも辞さない。今の時代にも似たような人がいるような。遺体に着せる屍衣にポケットはない。あの世には何も持っていけない。そして決して幸せなラストは待っていないのだ。




さて、桜もいよいよ満開ですね。街なかに桜が溢れていて改めて驚きます。公園、学校、寺社仏閣はもちろん、色んな場所に桜が植えられていて歩いているとちょっとやり過ぎと思うほど。綺麗だから良いけれど毛虫落ちてくるので、ビクビクしながら歩いてます。