天気も良い午後、眠け覚ましに永青文庫まで行ってきた。永青文庫は目白台にある肥後細川家所蔵の美術品を中心に展示する小さな美術館である。公開された「長谷雄草紙」を観てきた。



長谷雄草紙は鎌倉後期から室町時代に描かれた絵巻物。御伽草子のはしりといわれる。平安時代の貴族・紀長谷雄と朱雀門の鬼の物語。長谷雄の邸に人間に化けた鬼がやって来て、双六の名人長谷雄に勝負を挑んでくる。長谷雄は全財産を、鬼は絶世の美女を賭ける。勝負は長谷雄が圧勝し鬼は美女を連れてくる。しかし100日間は女に触れないように長谷雄に約束させる。



だが80日が経って長谷雄は我慢できず女を抱いてしまう。すると女の身体は溶けて水になってしまった。しばらくして鬼がやってきて約束を破った長谷雄に襲いかかる。死体から良いところばかりを集めて作った女だったのだ。しかし長谷雄が北野天満宮の神に祈ると鬼は慌てて退散した。そんな話である。色鮮やかで絵も丁寧に描かれており、江戸時代の御伽草子とは少し違う。




この手の話で、江戸時代の御伽草子といえば「稲生物怪録」。妖怪話の傑作である。子供の頃から好きな話だ。江戸中期、広島三次藩の武士稲生平太郎の邸に、30日にわたり連日起こる怪異。偉丈夫な平太郎は怖がりもせず様々な妖怪たちに冷静に対処していく。その様子が面白い。



最後は山ン本五郎左衛門(太郎左衛門)と名乗る妖怪の大将が現れて降参する。角川ソフィア文庫では平太郎から直接聞いて書き記した柏正甫の「稲生物怪録」を東雅夫が、平太郎本人が書いた「三次実録物語」を京極夏彦が現代語訳してくれて読みやすい。

妖怪たちの愛らしさ含めて愛蔵書である。


 

 


永青文庫のあとは、神楽坂の路地にある「おはぎと大福」で、おはぎを買って帰る。背徳のおやつは6個詰合せ。あんこの甘みを抑えるともはやスイーツではないだろう。いくらでも食べられるからだ。美味しい。