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「月の裏側」なんとも魅力的なタイトルである。タイトルに惹かれて手に取る。レヴィ=ストロース!そういえば学生の頃「悲しき南回帰線」もタイトル買いしたな、と思い出す。この情緒的なタイトルはフランス人だからか。ロマンチックなエッセイのようなタイトルだが中身は甘くない。
レヴィ=ストロースといえば構造主義を生み出した文化人類学者で、構造主義といえば学生の頃、浅田彰のポスト構造主義とか中沢新一だとかがベストセラーになって、ペダンティックだった学生たちはこぞって読む。よくわかんないけど読む。そう、で構造主義とは現象を分析するとき、目に見えるものを比べるのではなくその背景にあるものの構造を見極める姿勢を指す。サルトルの実存主義と対立する考え方だ。ヨーロッパがなんでも進んでて正しくて偉いという考え方に真っ向から反対した。ダイバーシティな考え方だ。
「月の裏側」は日本文化への視覚とサブタイトルにあるように、日本文化を語る。日本の神話がどこから来てどこへ流れていったのか、日本とヨーロッパの文化が時にあべこべであること、日本の芸術、浮世絵。世界に比較するものがない縄文文明のオリジナリティ。虫の鳴き声を騒音とせずに鑑賞するのは日本人だけ。
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浮世絵の中でもレヴィ=ストロースが好きだったのは歌川国芳の「水滸伝」だそうだ
そして、日本は世界で唯一独自の文化を忘れずに「科学技術がもたらした変革との狭間である種の均衡を見出すのに成功してきた」
20世紀、世界の中心と勘違いしてアイデンティティが崩壊したヨーロッパと文化的に反対側、月の裏側にある日本こそが重要な鍵を握るという示唆。
欧米や他国そのまんまではなく、過去の日本のまんまでもなく、リオ五輪で全員10秒台なのに400mリレーで恐るべきバトン渡しで銀メダルを取った陸上の日本代表のように。スピードやチームワークで強豪国を倒すサッカーやラグビーの日本代表のように。二刀流でアメリカ人の野球観を変えた大谷翔平のように。ハイブリッドして過去を捨てず新しいモノを創り出していく独自性を日本人は大切にしていきたいもんですね。