ASBJのHPに「 第331回企業会計基準委員会の概要」があり、その中に、議事概要別紙(審議事項(4)マイナス金利に関する会計上の論点への対応について)(PDF)が公表されています。
 
 
 マイナス金利に関する会計上の論点としては、「退職給付に関する会計基準」における割引率にマイナス金利を反映させるか否かというところです。
 
 個人的には議事概要の中の「ゼロを下限」としてマイナス金利は適用しないという方の論拠の方が説得力があると思っており、実体の即しているのではないかと思いますが、どうでしょうか?
 
 ちなみに、現時点ではマイナスの幅が小さいためどちらでもよいとの結論ですが、今後もしマイナス幅が大きくなる事態があると、マイナス金利適用の有無は大きな論点になるとともに、どちらにするか明確にする必要性が生じると思います。
 『-会計監査の信頼性確保のために-「会計監査の在り方に関する懇談会」提言』の中に脚注で「監査の品質を測定する指標(Audit Quatity Indicators)」という言葉がでてきます。
 
 この言葉は初めて聞きましたが、アメリカを中心に会計監査の透明性を向上させる手段として検討が進められているようで、少なくとも2008年にはこのアイディアがあったようです。
 
 会計監査のレベルを上げるためには、もっとオープンな形で監査法人を評価する仕組みが必要だという考えだと思いますが、確かにそうかもしれません。
 
 このような評価制度があれば、会計監査の緊張感が高まり、会計士の負担も増加するかもしれませんが、市場からの信頼性も高まるのではないでしょうか。
 
 このあたりの発想はさすが監査先進国のアメリカというところでしょうか。
 
 ちなみに、実際にAQIが運用されることになると、おそらくその評価の過程で、監査役等(監査役・監査委員会・監査等委員会)に対してのヒヤリングも行われることになると思われますので、まずは監査役等がしっかりと会計監査人を評価する必要が出てくると思います。現在の制度でも当然に求められていますが、ヒヤリングされるとなると緊張感が違ってくると思います。意外とこの観点からの効果が大きいかもしれません。
 
 今後導入の方向で議論されるかまだ分かりませんが、このようなことも考えながら会計監査を行うことも大事だと思います。

 2015年10月に設置された「会計監査の在り方に関する懇談会」の議論が取りまとめられ“提言”が公表されています。

 

→ 金融庁HP 会計監査の在り方に関する懇談会」提言の公表について」

 

 具体的に踏み込んだ提言もあり、今後の会計監査の品質の持続的向上のための意見として非常に良い提言じゃないかという印象を受けています。

 

 東芝事件等により会計監査の信頼性が揺らいでいることは紛れもない事実だと思いますが、それを契機にこのような提言がでて、対応、改革が実行されていくのであれば、東芝事件も無駄ではなかったということになると思います。

 

 個人的な印象では、会計監査実務は今いい方向に向け大きな変革が行われている気がします。形式ではなく実質、そしてより深度ある方向に急に進み始めたような気もします。

 

 しかし、何らかの仕組みを素早く整えなければ“持続的”な品質向上とはなりませんので、この提言を受けてどのような対応がどれくらいスピーディーになされるか注目だと思います。

 以前からコーポレートガバナンスについては非常に重要な概念と思っていましたが、コーポレートガバナンスコードが適用となってから、幅広く議論の対象となってきたと思い、日本企業(特に上場企業)に対し将来的に良い影響を与えていくのではないかと期待しています。
 そのような中、東芝問題もありニュースとしてはネガティブなものがどうしても報道されやすい傾向にありますが、シャープの件についても“悪い例”として参考になるとの書評を読み、すぐに購入し読みました。

シャープ崩壊 ―名門企業を壊したのは誰か/日本経済新聞出版社
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 読んで直後の感想は、「とにかくダメな会社だなあ」というものです。
 
 会社経営はやはりトップ(社長)が大事ですが、会社が傾く原因を作るのもやはり社長かなと。

 ただし、シャープは多額の投資の失敗という事もあり、それなりの存在感がある会社ですので、経営の失敗も注目を浴びるという事でしょうが、シャープと同じような問題を抱えた企業は多々あるのではないでしょうか。
 特に強く感じた事は、社長を退任後、会長、相談役として院政を敷くという統治(ガバナンス)がもっとも大きな問題だったのかな、というものです。
 確かに過去しっかりとして経営版段を行ってきた社長には、退任後も何らかの形で会社に貢献できるのではないかと考えがちですが、経営環境は刻々と変わっていきますので、過去の経験は必ずしもプラスにならず、どちらかというとマイナスになりがちではないかと思います。 
 現在のように非常に速いスピードで経営環境が変わるなか、過去に決めた会計方針や業務管理の方法等は実態にそぐわなくなってきているものも多々出てくると思います。しかし、ローテーション等による担当者の変更がなければ、なかなか一から再度検討しましょうという事にならないと思われ、結果、実態にそぐわない会計処理や業務管理が行われ続けられるリスクが生じやすくなると思います。
 世の中は常に変わり続けていますので、その中でビジネスと行う人々や組織も常に変わり続ける事が必要で、特に組織においては、代謝が進みやすい仕組み作りが重要になると思われます。また、コーポレートガバナンスにおいてもその観点での統制を組み込むことが重要と思います。

P.S.
 途中からシャープの話から違う話に代わってしまいましたが、シャープの話に戻すと、本を読んだ印象として再起は至難の業ではと思わざるを得ません。
 中に三洋電機の最後と似ているという話が出てきていますが、他の日本メーカーが買収に名乗りをあげないという事は魅力がないという事で、三洋電機より魅力がないという事ではないでしょうか。
 普通このような状況になると、いい部分をばら売りして終わりとなる可能性が高くなると思いますが、ホンハイは解体せずに再生することができるのかな?と正直疑問です。

 あるとすれば、傘下に入れたうえで査定し必要な部分のみを伸ばし投資を回収するということになるのではないかと...。どうなるかわかりませんが、今後の展開が興味深いです。