「もっとも危険なことは、敗北よりもむしろ自分の敗北を認めるのを

恐れることであり、その敗北から何も学ばないことである」

ウラジミール・レーニン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本のこれからの戦後左翼は

こういう運動になるのかもしれないと考えさせられる本だった。

 

 

ねじれた思考、そのねじれをいかに正当化するか

これを行うには、ある意味、魔術的な曲芸が必要になる。

 

 

この曲芸が、現代の日本人にとって

腑に落ちるかどうかは、分からない。

 

 

第二次安倍政権誕生で、戦後保守・右翼陣営は活気づき

戦後左翼陣営は、方向転換を迫られた。

 

 

どこの国でも、どこの陣営でも、欺瞞は入る。

安倍さんの戦後レジームの脱却は、戦後レジームの強化だった。

 

 

日本の典型的な戦後左翼の主張は

整合性が取れないから、支持されないのではなく

 

 

安倍さん的な保守、戦後保守・敗戦利得者の方が

優れているのでもなく、単なる左翼疲れか、飽きちゃったこともあるだろう。

 

 

説教じみた坊さんのお話に飽きちゃうのに似て

これがダメ、あれがダメ、というダメ出しにも嫌になったのかもしれない。

 

 

 

とりあえず、適当にいってみるか。

 

 

「私らは侮辱のなかに生きている」 大江健三郎

これを引用して、福島の原発事故で

 

 

日本という国の社会は、どんな性質の権力に統治されているかが

明らかになって、その構造は「侮辱」

 

 

原発事故は、大東亜戦争に突入した構造と同じで

戦前・戦中の<無責任の体系>のように腐敗しきっている。

 

 

大言壮語、「不都合な真実」の隠ぺい、根拠なき楽観

自己保身、阿諛追従、批判的合理精神の欠如

 

 

権威と「空気」への盲従、落とし前をつけなければならないという感覚が

そもそも不在である、というメンタリティ

 

 

こうした構造が、戦争へと駆り立てた戦前と酷似していて

恐ろしいまでの現実感を感じたという。

 

 

 

「一目瞭然といわざるをえないのは、戦争指導者の

妄想的な自己過信と空想的な判断

 

 

裏づけのない希望的観測、無責任な不決断と混迷

その場しのぎの泥縄式方針の乱発、などであろう。

 

 

これらすべてが、2010年の福島原発事故で

克明に再現されている」

笠井潔   『8・15と3・11ー戦後史の死角』(P87)

 

 

 

多くの人が「侮蔑」の中で死んでいったから、犬死

この「侮蔑」の体制と戦うのは、そのため

 

 

福島原発事故の歴史的意味は、戦後の日本の技術を引き裂いたこと

国土に取り返しがつかない傷が与えられ

 

 

原発の建設によって象徴される成長至上主義による

国土開発のあり方が、根本的な疑義さらされたこと

 

 

40年にわたる成長のあり方を変更せねばならないが

代替策を見出せぬまま、差別的な中央と周辺の構造を維持

 

 

よって、われわれの大部分が「侮辱」の被害者であると

同時に加害者、この認識が出発点でなければならない。

 

 

 

 

地震・津波と事故で、「戦後」という歴史は区切られ

「平和と繁栄」から「戦争と衰退」の幕が上がった。

 

 

「戦後」=「平和と繁栄」の歴史を再検証すると

準備され執拗に潜在していたものが、露呈している。

 

 

原子力基本法には、「平和の目的に限り」

「我が国の安全保障に資する」とあるが、欺瞞的詭弁

 

 

原子力=核技術が安全保障に関わるなら

核兵器の開発や装備を意味する。

 

 

「平和の目的に限り」と安全保障(=核武装)

との間に大きな矛盾はない。

 

 

諸国は、建前として「平和のために核武装する」

そしてそれは、「相互確証破壊」や「恐怖の均衡」で長年、蓄積される。

 

 

「原子力の憲法」に「安全保障」が入ったので

日本の核武装を国内法で禁ずる根拠は、失われた。

 

 

「平和憲法と非核三原則を掲げた世界唯一の被爆国」において

米軍の核の持ち込み、秘密協議などや

 

 

核兵器製造の経済的・技術的潜在力が常に保持されてきたが

その無意識的な認識を否認し続けてきたこと

 

 

これが「否認の構造」だが、原発事故を契機として崩れはじめた。

「否認の構造」の崩壊は、日本を取り巻く国際情勢の緊迫にも見て取れる。

 

 

TPPは、米国政府の政策と日本国民の大部分の利害の衝突

沖縄問題、尖閣問題などの領土問題

 

 

問題の本質は、「対米従属」

「対米従属」がアジアでの孤立を招き、それが「対米従属」を強化する。

 

 

外国の力によってナショナリズムの根幹的アイデンティティを

支えるというグロテスクな構造が定着

 

 

2008年の世界的金融危機は、日米間の従属的な構造から

収奪の構造へ改変されたが、冷戦構造の崩壊からみれば、必然的

 

 

 

 

読んでみるとけっこう面白い。

マルクス・レーニン主義者から見地は、斬新だった。

 

 

個人的には、スターリンを高く評価していて

スターリンがいなかったら、第二次大戦の勝者になり得なかった。

 

 

残虐さや非人道性は横に置いて、あの辺の歴史を読むと

もっとも優れた指導者は、スターリンと思わされる。

 

 

 

 

なぜ戦後左翼は執拗に反原発に拘るのか

福島の原発事故に集団ヒステリーを起こすのか

 

 

日本のエネルギー事情を考えれば、原発しかないのだが

どれだけ電気代や石油価格が高騰しても、反原発は外せない。

 

 

それは、原発=核武装、という図式が

彼らの中に沈殿し、膿のように溜まってしまっていることによる。

 

 

核武装=悪という構図と合わせると、

原発=核武装=悪、この認識はどうやら書き換え不可能のようだ。