虐待家庭だからといって、動物を飼ったことがないわけではない。

幼い頃で、ぼんやりとした記憶

 

 

田舎育ちの親は、おそらく都市で暮らし

何か違和感があったのだろう。

 

 

よく飼っていたのは、鳥さんだった。

母親が、たぶん打算からお客さんに受けるであろう

 

 

九官鳥を3回ぐらい、飼っていたような気がする。

九官鳥のカゴを、誰かが洗っていたら

 

 

顔にぶつかる勢いで飛び出し、空へと消えていった。

あ~、よかった、自由になれたんだと思った。

 

 

 

ほぼ毎日、怒声が飛び、しばき回される生活

そんな中で、ほとんどの動物さんは、おかしくなった気がする。

 

 

別に、動物さんに怒りが向いていないのに

私たち子どもが上げる悲鳴が、おかしくさせたのだと思う。

 

 

とりあえず、みんなおかしくなったことは覚えている。

九官鳥、いろんなインコなど、おかしくなって

 

 

文字通り、飛んで逃げていった。

九官鳥はみんな逃げたし、いろんなインコは気が狂ったようになった。

 

 

四六時中、鳴いて、お~よしよしと

指を入れると、穴が開くんじゃないかって勢いで、突かれた。

 

 

それで指が血が出ちゃうから

余計おかしくなって、籠の中で暴れ回った。

 

 

 

うっすらとした記憶でしかないが

一羽だけ、天寿を全うしたかもしれないインコがいた。

 

 

オカメインコだっけ

鳥さんが苦しむのを見るのは、非常に辛い。

 

 

声も出さず、バタバタともだえ苦しんで

何かしてあげたかったけれども

 

 

泣きながら見守ることしかできず

一生懸命、声をかけ続けた。

 

 

泣きながら見守っていたが、丸一日ぐらい苦しんで

親は、ご飯を食べに出かけたりしてたような。

 

 

そのオカメインコは、長時間、苦しんでもがいて亡くなった。

それをずっと見ていて、その最中も悲しかったし

 

 

亡くなると、もっと悲しかった。

その思い出があって、たぶんいろんなインコが来たと思う。

 

 

みんなおかしくなっちゃって

一切、人間に懐くことはなかった。

 

 

 

鮮明に覚えているのは、姉が髪の毛を鷲掴みにされて

ガラス戸に顔面を叩きつけられたこと

 

 

ガラスが派手に飛び散り、四散した。

たぶん、恐怖で体が硬直したと思う。

 

 

 

ある時は、階段から物凄い音がして

壁にぶつかる大きな音もした。

 

 

姉が母親に突き飛ばされて

階段を転げ落ち、壁にぶつかったようだった。

 

 

この程度のことは、ごくありふれた日常

もっとひどいことは、いくらでもあり、数え切れない。

 

 

そんな人間ですら、気が狂いそうな環境で

動物さんが無事で済むはずがない。

 

 

 

嘘か真か、ワンコも飼ったことがあると姉が言っていた。

姉が言うことは、だいたいが嘘なので、真偽は分からない。

 

 

そのワンコも逃げ出したらしい。

ワンコが逃げ出すって、よっぽどと思って

 

 

詳細を聞いてみると、ワンコをどこかにつないでおいたら

知らないおじさんに、ついていったのだそうな。

 

 

そういやワンコもいたような気もする。

幼すぎて、判然としない。

 

 

 

日々、繰り返される恐怖の中で

姉に、なぜこうなっているのか聞いたことがある。

 

 

きっと、お狐様がとりついているんだと言う。

そうかもしれない、と深く頷かされた。

 

 

まず姉が怒鳴られ、殴られ、凍り付いていると

それでは飽き足らず、私にその怒りの矛先が向かってくる。

 

 

好きなだけ、怒鳴りちらされ、殴られるのだが

理由が分からない、だいたいは理由なんてない。

 

 

 

母親が、バカにしたように、語ったことがある。

あんたがあんまり泣いて、止めてやってほしいと言うから

 

 

止めてやったと、誇らしげに語る。

その狂気じみた笑いに、心底、恐怖した。

 

 

あの狂気の中にいさせられて

動物さんたちがおかしくならない訳がない。

 

 

 

最後に飼ったのが、文鳥さんで、卵から育てた。

卵を温めるのに、いろんなものを使った。

 

 

毎日、急いで学校から帰って、卵を見守った。

卵から孵った時は、嬉しくって、たまらなかった。

 

 

その文鳥さんは、産まれてから、あっという間に亡くなってしまった。

理由を聞いても、分からない。

 

 

その亡骸を何度も見ては、泣いていたけど

あの地獄の中で生きることは、困難だったと思う。

 

 

幼子が痛い、痛い、と泣き叫び、絶叫する日々

動物さんたちが、正気を保っていられるはずがなかった気がする。