「今、世界経済は世界大恐慌以来の危機のもとにある。
危機を防止するのが仕事である中央銀行家や金融当局は、
今回の危機を引き起こした「戦犯」の一員である。
彼らの失敗を受けて、主流派経済学に対する批判も高まっている。
本書はミンスキーの理論に基づき、経済危機の原因を解明するとともに、
危機を拡大させた経済理論と政策の誤りを明らかにする」
服部茂幸 序文
服部さんは、日本のポスト・ケインジアンである。
島倉原さんが、昔、紹介されていたので、
たぶん、だいたい買った。
この本も、めっちゃ面白かった。
服部さんは、MMTをどう見ているんだろうか。
一番、気になるのは、この服部さんのMMTへの見解である。
序章 経済の危機と経済学の危機
第一章 人と経済学
1 ミンスキー経済学の形成
2 ミンスキー経済学とその影響
3 ミンスキーとポスト・ケイジアン派
4 復活する金融不安定性の経済学
第二章 『ケインズ理論とは何か』
1 『一般理論』の再検討
2 標準的ケインズ解釈批判
3 ミンスキーのケインズ・モデル
4 政策的インプリケーション
5 『一般理論』から金融不安定性の経済学へ
第三章 金融不安性仮説とサブプライム金融危機
1 金融危機の時代
2 バブルと信用拡張の悪循環
3 持続不可能なバブル依存型成長
4 金融の脆弱化
5 市場はいかに機能するか
6 従来の大恐慌論とサブプライム金融危機
7 危機は必然ではない
8 金融危機の一般法則
第四章 金融の技術革新と金融不安定性
1 金融の技術革新が金融システムを不安定化する
2 危機を増幅させた負債のピラミッド
3 金融危機を作り出した金融市場の自由化
4 影の銀行システムと金融規制
5 金融の自由化政策の帰結
第五章 大きな政府と大きな中央銀行
1 経済崩壊を食い止めた政策介入
2 最後の貸し手機能
3 金融機関の破綻処理と公的資金注入
4 大きな政府の利潤下支え効果
5 金融不安定性の予防策
6 金融不安定性政策はいかにあるべきか
第六章 「信認」のパラドクス
1 ミンスキー派の警告
2 判断ミスを繰り返すFRB
3 後始末戦略はなぜ機能しないのか
4 広がるFRB批判
5 ミンスキー派の警告
6 バーナンキは危機から何を学んだのか
7 FRBはどこで間違えたのか
第七章 マネー・マネジャー資本主義
1 資本主義の退化
2 ミンスキーのマネー・マネジャー資本主義論
3 経済構造、ゲームのルール、経済理論の共進化
4 マネー・マネジャー資本主義の病と金融危機
5 新自由主義レジームの行き詰まりと世界金融危機
第八章 リベラル派のコンセンサス
1 政策論の対立軸
2 金融安定化政策
3 貧困と経済的不平等の解消、経済成長と雇用の確保
4 産業の育成
5 世界的不均衡
6 今何が必要なのか
終章 金融危機は繰り返される
1 カサンドラの予言
2 今回も何も変わらない
3 もう一つのアメリカ経済論
4 新自由主義路線の破綻
5 日本の危機とアメリカの危機
6 愚行は伝承されなければならない
ミンスキーの著作を直接、読み漁るよりも
概略を知りたいだけなら、お勧めできる本である。
われわれミンスキアンの主張が要約してある。
正論なのだが、正論は通らないのが現実だ。
オバマ政権は、大規模な金融詐欺に対し、
看過するどころか、詐欺師たちを救済する。
高まる金融規制の声に応じる態度だけは見せたが
救済した詐欺師たちの要望に応えて、完全に法案を骨抜きにした。
経済学で困るのは、お金にまつわるものなので
非常に生臭くなり、「ほんとう」を求める学ではないところだ。
しかし時期がやってきて、「ほんとう」が必要とされるために
ポスト・ケイジアンは、「ほんとう」を追求することを止めない。
ポスト・ケイジアンの中でも、ミンスキーは金融的ケイジアンと
呼ばれることを好み、その流れを引き継ぐ者たちをミンスキアンと呼ぶ。