最近、気に食わないのが「いじる」という現象である。

「いじる」ことが、なにか良いように感じ取られる風潮が気に食わない。

 

「いじる」という現象は、何かというと

他者を貶めて、それをその他、大勢が嘲笑することだと定義している。

 

「いじる」現象の始まりは、テレビで芸人さんが、そういう芸をやって

笑いをとることから、蔓延したように見える。

 

芸人さんはそれで大金を稼いでいるからいいだろう。

しかし、社会全体に蔓延してしまうと、かなり危険だ。

 

この現象がプロ野球の世界にも起きているようで、

平気でやっていることに悍ましさを感じる。

 

熱烈な阪神ファンだが、この行為を行う金本阪神は嫌になる。

金本は確かに偉大な選手かもしれないが、現役時代、

彼を慕う新井選手を「いじって」、笑いをとっていた。

 

その結果、新井選手は本来持っているはずの実力を阪神では出し切れず、

広島に復帰するやいなや、大活躍をし、今でもなくてはならない存在となった。

 

最近では、松坂大輔投手が中日に居場所を得て、

後輩に「いじって」くれと記事が出ていた。

 

ほんとに良くない現象だと思う。

松坂選手に対して、いろいろな誹謗中傷が流れていたが、

彼は間違いなく日本球界の功労者の一人だから、そういうのはダメだと断言できる。

 

子どもの時から投げ続けて、メジャーでも投げ、

故障しない方がよっぽどおかしい。

 

これだけの選手を貶めて、一体どこの誰が得をするのだろうか。

別に犯罪を犯したわけでもない。

 

テレビには元犯罪者がたくさんいるではないか。

ホリエモン、猪瀬直樹、高橋洋一など、すぐにほとぼりが冷めたとばかりに露出している。

 

松坂選手は好き好んで、怪我をした訳ではあるまい。

一生懸命やった結果、怪我をしたのだから仕方がないだろう。

 

その松坂選手に、どんどん「いじって」くださいと言わせる風潮が気に食わない。

かつてのような圧倒的な強者ではなくなり、今は弱者に近いのだから

その人を叩きまくる行為、そのものが日本社会全体、ひいては、国家を弱体化させるように思われる。

 

もし「いじる」という行為が許されるとしたら、

その状況は、どんなものだろうか。

 

圧倒的に上位に立つ立場の人が、その下の人々に愛嬌があるように思ってもらおうとして

少々、道化を演じ、そういう側面もあるのだなとされる時か、

上に書いた芸人さんのように、その行為そのものが儲かる、こんな時だろう。

 

それが今や圧倒的な弱者に対して、平然と行われていることに愕然とする。

 

金本阪神をどうもいけ好かないのは、平然と「いじる」ことが行われる点にあるように思う。

監督やコーチという絶対的な立場の人たちが、使われる側の選手を

公然と「いじら」れば、選手たちの気持ちはどうだろうか。

 

周囲に馬鹿にされ、ファンにもヤジを飛ばされても平気な人はなかなかいないだろう。

選手も人間であり、プロ野球に入ることができるような優れた人々で、

尊敬されてきたのに、そういう扱いを受けたのでは、気持ちが持たないように思う。

 

普通の人でもきついだろうに、プロともなれば一層きついように見える。

ベテランは優遇し、若手・中堅は罵倒する。

 

経験論者にありがちな過ちで、勝手に活躍してくれ、プロの水にもなれ、

レギュラーも確約しているベテランには、睨みをきかせ、

若手は、褒めて褒めて褒めたおす。

 

叱咤するのは、陰で行うべきで、それも一対一で行った方が良い。

それも叱りつけるのではなく、説諭するのが、組織の長というものだ。

 

「いじる」という社会風潮なり現象は、いじめよりも質が悪いように見える。

圧倒的強者が弱者を「いじって」は、絶対にいけない。

 

心理的な圧迫を受け、精神的にまいり、失敗を犯す、

そしてまた「いじら」れて、失敗を犯す、負の連鎖に入ってしまう人の方が多いだろう。

 

ルサンチマンまでいけなかったか、また今度。