「誇大自己症候群」(岡田尊司・ちくま新書)


なんとも怖い本である。近年多発する私たちの社会の

凶悪事件の数々は、心胆寒からしめる。

それを、精神医学者から見た本である。


このネーミングは、作者が名づけたもので

こういう定義である。


「現実に不適応をひきおこすほどに肥大した万能感と

他者に対する驕りを特徴とする。」


この本に出てくる犯罪者に対する設定は、

実は私たちみなに当てはまるのではないかと思う。

厳密にいえば、犯罪者予備軍だ。

それが、いやだ。


うまくいけば”オレ、スゲー!!!!”

ぐらいはだれでも思いたいし、自己愛がなくては

生きてはいけない。

それはなにも、スポーツ選手だけにかぎらない。


また自信を形作るには、他者から認められるだけでなく

自分に言い聞かせながら、自分を説得している。

誇りを持ち、誇大に自己を保つからこそ、責任ある仕事を

行うことができる。別にだれにみせるわけでもない、

単なる自己満足に近いものであっても。


ただ、肥大した自己と万能感は危険と隣り合わせなもの

であることは認める。

しかし、ほんの数例の凶悪事件が起きたぐらいで

精神医学者に、現実で生き抜く、辛さや苦しさを

噛みしめてくらしていくために、ある程度は必要なものを

非難されたくはない。むかっ


現代社会は、大多数の若者にとってあまりに厳しい。

こんな風に語られると頭にくる、病人ばかりに接しているくせに

なにが分かるか、ほとんどの若者は文化資本など

享受できないけれど、けなげに踏ん張って生きてるのだ。

非難や悲観が巣くう大局観に喝をいれてやりたい。メラメラ