ジョナサン・ストラーン編の「シリコンバレーのドローン海賊」 | クリムゾンの箱

 

841作品目のSF小説は、ジョナサン・ストラーン編の「シリコンバレーのドローン海賊」。

 

「シリコンバレ-のドローン海賊」、読了。この短編集、めちゃくちゃ良かった。パンデミック、経済格差、人権問題、資源問題や、海洋の温暖化、氷冠の融解、異常気象、生息地の喪失などの現代社会の問題と、未来への展望を結びつけている短編ばかり。不透明な未来を見通す。

表題作は、社会の底辺に押し込まれた少年少女たちが、配達ドローンを襲撃し荷物を奪い、それを貧しい人々に配る話。社会的不平等や経済格差がテーマ。どれほど科学技術が発達しようが、資本主義は依然と搾取であり続け、格差社会は残るというメッセージ。

個人的に良かったのは、「エグザイル・パークのどん底暮らし」と「渡し守」。「渡し守」は、中流階級の死は稀であり、富裕層には至ってはほとんどが死ぬことがないほど科学技術が発達した社会でありながら、カースト制は残っている未来社会を舞台とした、最下層カーストの主人公の物語。衝撃的な結末。

「エグザイル・パークのどん底暮らし」は、ナイジェリア沖にプラスチックやその他の廃棄物から作られた島があり、そこで暮らす人々の物語。その島では社会的な犯罪行為の再定義や、共同体による問題解決の試みが描かれる。

その島が重きを置いたのは、犯罪ではなく、社会的損害行為。ある企業が環境を広範囲に汚染したとしても犯罪にあたらない可能性があるが、社会的損害にはあたる。その社会的損害を最小限に抑えようというコンセプトを土台にして、独自の社会を築いている。

科学技術の進歩が必ずしも現代の問題に対する簡単な解決策を提供するわけではないという考え、現在の経済システムがこれらの問題に適切に対応しているかどうかについて疑問を投げかけている。絵が良いし、いい話を読んだ気分にさせてくれる。