冒頭から書き始めるなり突然の極論ですが、市販されていた「発光器」という製品には技術らしい技術などありません。「制御もなく電気を流して電球が焼け切れる」、という、ただそれだけです。

しかし安価に供給されたのは事実なので、コストダウンのノウハウは活きていますし、この点は中小よりも大手メーカーの方が巧みだったと思います。それは東芝・ナショナルは消耗品たる「閃光電球」の販売が目的で、発光器は単にその手段であったことを考慮に置いてもです。

一報、閃光電球の方には化学を応用した様々な工夫の開発史があります。またその発光を同調させるカメラには新たなシャッター機構の開発に伴うタイミング制御の工夫があり、これは現在のストロボ制御技術に発展しています。電子カメラの時代になってもシャッター機構は進化し続け、特に最新の電子グローバル・シャッターはローリング歪や、人工光源の同調に関する状況を一変させてしまうはずです。

 

ところで私も実験や製作の傍ら色々と調べたおかげで、閃光電球には大変詳しくなることができました。その情報ソースとしては文字資料を読んだ事だけではなく、実験にもよっています。閃光電球を純粋な撮影目的以外で恐らく200発は消費しましたが、改造発光器のテストだけならば、そこまでの数が必要なはずもありません。そのためにダミーLED電球なども作ったのですから。消費の理由は光度曲線や電気的特性などの非公表のデータまで測定をしてみたからで、それらを自ら試してみるしかなかったのは、当時の関係者が誰もウェブ上には関連情報を書き残しておらず、いくら検索しても見つかりはしないからです。

 

閃光電球は今世紀の初め頃までは市販があったので、量産技術を知る人ならば今も探せば見つかるのでしょう。しかし新技術の開発は1960年代までなので、その生き証人は現在どれだけご存命でしょうか。つまり、インターネットが普及した頃合いには最早、新製品の開発や改良に携わった人たちは既に物故されているか、少なくともネット世界に関わりを持てないご高齢に達していたのだと思います。これではインターネット上でウェブサイトを丹念に探しても何も出て来るはずがありません。このような情報の断絶現象は他の分野でも良くあることです。

 

難しい開発史どころか、ずっと易しいはずの「使い方」についてさえ、少なくとも日本語サイトには満足に解説されたものは一つもないと思います。知りたければ1970年代中期までの古本を探せば網羅的な解説も出て来ると思いますが、それでも、

「将来発明される電子カメラを壊す危険があります」

などと未来の予測まで書いてある道理がありません。また私は英語は少なくとも回路設計するよりは得意なので海外サイトも探しに行きますが、やはり開発側の人が残した情報には行き当たらないのです。

 

詰まるところ、当時の技術資料とかメーカーの技報、工業規格といった古い紙資料以外に確かな情報源はないのですが、技術資料は図書館に残るようなものではありませんし、工業規格も市場の実態とは別物、という問題があるので、総合的な理解には多方面からの推理も必要だと思い知らされました。

このブログの大きなやり残しがあるとすれば、それらから導き出した知識の紹介でしょうか。

 

何はともあれ、これにて一連の投稿を一区切りとします。

目下の私はカメラとは関係のない分野に取り組んでいるので、この続きを書くとしていつになるとも分かりませんが、いずれまた。

 

擱筆