東芝の「BC発光器フラッシュエース」については初期の投稿で、私の原点で愛着の品だが設計には問題ある、旨を書きました。実はその他にも本機特有の不可思議な点があります。中でも最重要なのはランプテストと不発化なので、説明するのはこのタイミングが最適と考えました。また、私が改造準備の分解で何を観察しているのかの紹介も兼ねています。

 

 

「フラッシュエース」のランブテストの問題点とは、ボタンを押して赤く光ったとしても正しくは閃光電球の導通テストになっていない点です。

ボタンスイッチは単にテストランプをキャパシタと直結して光らせるだけで、閃光電球をバイパスした回路なのです。これで良しとする理由は、東芝が「自動充電回路」と称する通り、閃光電球を挿入するとそのフィラメントを通じてキャバシタに充電する方式なので「充電できた以上は閃光電球の良否とソケットの接触は確認済」、という理屈なのでしょう。ただしこの方法ではソケットに大きな接触抵抗があっても発見できません。相当に抵抗値が大きくとも充電は容易に進むので赤ランプは普通の光り方をしてしまうからです。

しかし一方ではメリットもあります。ランプテスト操作による閃光電球の不発化が絶対にないという事で、その具体策だった可能性はあります。

 

次の問題は電球の保持です。東芝P-3 IIIの投稿ではナショナル製AG球の篏合が緩いと書きましたが本機では一段と悪く、電極の摩擦がバネ圧に負けて球を放り出すことさえあるのです。この遠因はAG球のJIS制定が手遅れだったことで、そのため市場実勢を統合できずにAG球の寸法を曖昧にしか規定できなかったからでしょう(規格の意味がありません)。

一方、バヨネット球でもP-3 IIと同じくピン咬合が簡単に外れる問題がありますが、ナショナル製のアルミ口金で特に相性の悪いものが多く、まるで「互換殺し」で、P-3 IIとP-3 IIIの悪い点を合わせた上に強化したような感じでした。

これを読んで「私のは問題ない」と思われた向きもあるでしょうが、それはP3-IIの投稿でも述べた通り、大き過ぎる公差と低過ぎる加工精度が原因なので、その位の個体差が出てもおかしくないという話なのです。

 

さらに次はシンクロターミナルの極性のことで、なぜか他機種とは逆のセンターマイナスです。もちろん、この発光器が作られていたのは機械的な接点のカメラが前提の時代なので当時の問題点ではないのですが、極性整理の観念がないというのは電気屋らしくありません。

私の改造機は全て一般的なセンタープラスに統一しているので、投稿2回目の原状回復で紹介したキャバシタと23A電池はオリジナルとは天地逆に挿入して極性合わせをしてあるのです(載せた記録写真もその状態)。

見方によれば、逆接続が簡単に出来てしまうキャバシタとW10電池の上下対称な形状はシステムバグのようなもので、現在の設計規範なら許されないでしょう。

最後に一つ。本機には富士フイルムブランドの瓜二つの発光器が存在します。ボディを緑色に変えただけの実質同じOEM品にしか見えませんが、実はこの両者は電池蓋のサイズが微妙に合わず互換性がありません。つまり金型から違う別物なのです。これにはどうにも合理的な説明が見つかりません。

 

細かい部品も本機種に専用のものが多く、設計担当が丸ごと入れ替わったとしか思えないような他から浮いた存在、という印象をあらゆる点から受けたのです。