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裁判がTV中継されるようになり、
エンターテイメントとして定着した、今から遠くない未来の日本。
裁判員として参加した女の子に注目が集まって、アイドルグループが誕生したり、
スポンサーの意向で裁判員は商品CMに駆り出されたり、
TV局の都合で裁判日程が左右されたりと、ワイドショーというより完全にTV番組化した「裁判」に
ある事件で裁判員として参加することになった主人公の目を通して、
裁判員制度や司法の問題点、市民感覚や法律とは何かについて語られていく。
小説内で描かれる劇場型裁判があまりに大げさ過ぎて、ちょっと引いてしまう(苦笑)
まるで映画の「逆転裁判」みたいだ(私は観てないがCMの印象として)。
また裁判そっちのけで、自己アピールしたいがために証人として出廷する人間も出て来る。
今放送されているTV番組以上の過剰さで表現されているのだが、
そのおかげで人々が司法に興味を持つようになり、裁判官や検察官を目指す人が増大したとか、
または、逆にそのせいで裁判員や被告人のプライバシーが著しく損なわれるようになったりと、
劇場型裁判のメリット・デメリット両方が示されており、
もし現実にそうなったら、全くありえない話ではないと思えるところが怖い。
裁判中継から誕生したアイドルグループの名前が
「CSB法廷8(シーエスビーほうていエイト)」(笑)
なかなか洒落がきいたネーミングだが、決してチャラいアイドルなのではなく、裁判員裁判の経験から、
裁判や事件、司法に無関心な人々に関心をもってもらいたいという熱意のもとに活動しているという設定で、
後半、彼女たちの存在が裁判の流れを変える点が面白い。
一見突拍子もないように見える小説だが、著者が言いたかったのは裁判における多くの問題点ではなく、
ひとつの条文に集約される。
『この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、
人類の多年にわたる自由獲得の努力の結果であって、
これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、
侵すことのできない永久の権利として信託されたものである』日本国憲法第97条
「憲法や法律は人々を守るためにあるはずが、あれしちゃいけないこれしちゃいけないと
押し付けるものばかりだが、一つくらい読んだだけで元気になれる条文があってもいいじゃないか」
この言葉に、私は大いに共感する。