前回に引き続き,2回目も,高校入試における説明文や論説文などの「説明的文章の読解」について書きます。
前回は,説明的文章の読解に必要なのは語彙力で,言葉の知識を増やすためには,「普段の生活から『未知なる言葉』に関心を持つこと」と書きました。
今回は読解問題の解法における技術的な内容となります。
説明的文章の設問パターンとしては,およそ下記のものが挙げられます。
①本文で使われている漢字の読み書き問題
②本文で使われている表現についての文法・知識問題
③指示語の内容に関する問題
④接続語の問題および段落関係の問題
⑤本文の文脈・内容理解に関する選択肢または記述問題
⑥要旨に関する問題
⑦本文の内容に関する作文問題
①~⑦の中で,①と②は読解力とは関係ないので,これは本文をじっくり読まなくても,その場で即答できる問題です。⑦は群馬県公立高校の後期選抜入試で,平成26年度(2014年)から今年に至るまで5年連続で小問の最後に出題されている定番の問題形式です。それまでの説明的文章の小問の最後は,⑥の要旨要約問題が群馬県のずっと定番問題でした。
③の「指示語の内容に関する問題」は説明的文章を正しく読み取る上でとりわけ重要です。説明的文章では頻繁に指示語が使われているので,指示語の内容が正しくつかめていないと,指示語の内容を直接問う問題だけにとどまらず,⑤の「文脈・内容理解に関する問題」や,⑥の「要旨に関する問題」などさまざまな問題に影響を与えることになります。今回は,この指示語に関する問題の解き方・注意点について,詳しく取り上げてみます。
例題を挙げて,説明します。次のAとBの文で傍線部の「これ」が指し示す内容は何でしょうか?ちょっと考えてみて下さい。
A 父は去年,ぼくに腕時計を買ってくれた。これは,ぼくの大切な宝物だ。
B 父は去年,ぼくに腕時計を買ってくれた。これは,ぼくの大切な思い出だ。
Aの「これ」の指す内容で,「腕時計」と答えた場合,不正解です。ぼくの大切な宝物は,世の中にたくさんある腕時計のどれでもいいわけではありません。ぼくの大切な宝物は,「父が去年,ぼくに買ってくれた腕時計」であり,それは世の中に一つしかない特別な腕時計を指すことになります。よって正解は「父が去年,ぼくに買ってくれた腕時計」となります。ちなみに,「父が」の所を,「父は」になっていると減点となります。
一方で,Bの「これ」の指す内容は,「父が去年,ぼくに腕時計を買ってくれたこと」が正解となります。大人が見れば,至って簡単な問題に思えるかもしれませんが,これを中学生に出題すると,「父が」と書くべき所を「父は」と書いてしまったり,文末に「~こと」を書かないで答える子が結構多くいます。
指示語の問題の鉄則は,特別な例外を除き,必ず「前から探して,指示語に当てはめて読む」ことです。自分の書いた答えを指示語に当てはめて読んで,上手く読めなければそれは正解とは絶対なりません。読解問題が苦手な生徒の多くは,この確認を怠ります。指示語の「これ」は主語として使われ,主語として使うことができるのは「体言=名詞」と決まっています。自分の書いた答えを指示語に当てはめて読む確認をすれば,「父が去年,ぼくに腕時計を買ってくれたことは,ぼくの大切な思い出だ」となり,「父が」の所を「父は」と書けば読んだときに,二重の「は」が入り文としておかしいことにすぐに気付きます。また,「買ってくれた」の後に「~こと」を付けて,答えを体言化しなければ,その後の「~は」に上手くつながらないことは容易に理解できるでしょう。
「どういうことか」とたずねられれば,答えは「~こと。」で結び,「どんなときか」と聞かれれば「~とき。」,「どんな状況か」に対しては「~状況。」と答えるのは,国語の読解問題における当たり前のルールです。これらもすべて指示語の鉄則である「答えを設問の指示語に当てはめて読む」確認をすれば,正答率はぐんと高まります。
では,追加問題として,Cの文の「これら」は何を指すでしょうか。
C 父は去年,ぼくに腕時計を買ってくれた。これらは,ぼくの大切な思い出だ。
この場合,答えはこの文からは見つけられません。指示語が「これら」とあれば,答えは複数となりますから,ぼくの大切な思い出は「父が去年,ぼくに腕時計を買ってくれたこと」以外にもあり,それはこの文よりも前に書いてあると推測できます。このように指示語が「これ・それ・あれ」ならば答えは「単数」,「これら・それら・あれら」とあれば答えは「複数」存在すると意識して考えられれば,指示語が指し示す内容もぐんと掴みやすくなります。
また,最後に指示語がらみで重要な注意点を書きます。国語の記述問題では,書きぬき問題を除いて,本文の指示語は基本的に解答で使ってはいけません。本文の指示語は前後の文のつながりがあるからこそ,読み手はそれが何を指すのか探し出せますが,記述問題の答えで本文の指示語を使った場合,前文がなければそれが何を指すのか採点者にはまったくわかりません。「彼」「彼女」とはだれなのか?「これ」「それ」「あれ」が指すものは何なのか?記述問題の解答では,答え単独でその内容が第三者に明確に伝わるように,指示語の指し示す内容をきちんと書かなければ,入試では必ず減点の対象となります。
次回は説明的文章における「内容理解の選択肢問題または記述問題」と「要旨に関する問題」について書きたいと思います。
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