珍しく大曲を聴きました。標題の交響曲、これは
最初ホーレンシュタイン/ロンドン響のレコードで
知りました。
それは「巨人」、「復活」に次いでマーラーの音楽
に魅了される上で、もう決定的となったものでした。
今回はクーベリック指揮のバイエルン放送交響
楽団のLP盤で聴きました。先日大阪日本橋へ
出向いた折りに中古で買ったものです。
第1楽章は烈しい演奏です。入れ替わり変化する
曲想がストレートにぶっつけられる。明晰とも言える
し、ややどぎつさも感じさせるほどに・・・。
主題提示の終りの方から展開部へ進むにつれて
その感は強く、速めのテンポでぐいぐい突っ走る。
ホーレンシュタインの第1楽章が第2面にも回って
いたのに、クーベリックでは第1面で終わります。
しかし、第2・3楽章は大変優美。旋律の歌わせ方
や音のバランスが繊細を極めます。
解説には「優美を極めた春の歌」(第2楽章)とあって、
第1楽章とは極めて大きな変化です。
マーラー自身が作曲後に撤回したのだが、最初は
第1楽章に「夏が行進してくる」という標題が付けられ
ていたそうです。
しかし、その第1楽章、夏どころか真冬の山を連想
させるような自然の厳しさと脅威を不気味に描いて
いるようでしたが。
のみならず、展開部へと聴き進むにつれて、私には
人間臭さが感じられるのでした。それは理性をかな
ぐり捨てて、欲望のままに振舞うような人間の生き様
をどろどろと描いている・・・・そんな人間臭さを感じる
のでした。
第3楽章で最も印象的なのは、中間部で、あるいは
終りの方でも出てくるポストホルンの奏でる旋律です
ね。なんとも哀愁があって、最初聴いて以来ずっと
心に残って忘れられない旋律・・・。
実に美しく奏でられ、これら両楽章では誠に耽美的、
また官能的気分に酔わせてもらえるのでした。
第4楽章 不気味な低音の序奏からアルトが神妙に
歌い出します。ニーチェの詩によるもので、「快楽は
苦悩より深く永遠を欲する」と結んではいるけれども、
歌は苦悩に満ちて神秘的に聞こえる。
第5楽章 ここもアルトの歌と少年合唱から成る。
ペテロが十戒を破った罪をキリストに許される喜びが
歌われて、明るさに満ちている。
冒頭の鐘の音が天上の歌を想わせて印象的。
第6楽章 心に最も安らかで深い感動を呼び起す音楽。
全曲がとても長いので、一部だけをと思えば必ずこの
楽章になりますね。
しんみりと心に沁みて、最後は動かし難く深い心の高揚
に到達させてくれるすばらしい音楽。
しかし、クーベリックの演奏は旋律線を極力抑えて、対
旋律や微妙な和音の動きを微に入り細に入り表現して
いるようです。
ややそれに過ぎてというか、やや重苦しく聞こえ、全体
の美しい流れと、何よりも最後の盛り上がりが、ホーレン
シュタインを聴いていた自分には、あっけないほど軽か
ったです。 これが意外にも残念なところでした。