ラフマニノフ 「悲しみの三重奏曲」 | 音に巡る想い(2005~2010) / ビデオ画像と音楽(2011~)

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クラシック音楽に目覚めたのはSP時代だった。知人から借りたレコードが
きっかけ。後にLPを集めたりしたが、時に感動して涙した頃が懐かしい
な~。/

主に四季の花や自然の風景などビデオ撮りした動画に、出来るだけ自作のBGMを付けて載せたいと思います。

前回に次いで、多分去年大阪の中古店で買ったLPで、
初めての曲を取り上げます。
ラフマニノフのピアノ三重奏曲 第2番 ニ短調 作品9
「悲しみの三重奏曲」。


「悲しみの」とは、ラフマニノフが偉大な師と尊敬していた
チャイコフスキーの死を悼んで作曲されたことによる。
これは、チャイコフスキーがこの10年ほど前に、ルービン
シュタインの死に、「ある偉大な芸術家の思い出に」と題する
追悼の三重奏曲を作曲しているので、ラフマニノフがそれに
倣ったものとされている。


第1楽章  ピアノの下降するフレーズが繰り返される伴奏に
乗って、長く伸ばされるヴァイオリンの音は、なんとも沈痛な
趣きである。
解説によれば、この冒頭部は序奏に当たるらしい。初めて
聴くのでソナタ形式の全体像は掴めなかったが、冒頭の悲しみ
の表情は激しく、失意・絶望感のようでもあり、それをどこに
ぶっつけていいか、もがき自暴自棄のようにすら聞こえる。
まだ20歳の青年ラフマニノフが、深く悲しみにうちひしがれた
心の吐露である。


第2楽章  ピアノの静かな独奏に始まるが、それは非常に
深い趣きのある旋律である。悲しみの色合いの中にも、師と
仰ぐチャイコフスキーへの親しみが感じられるような・・・。
この後は6つの変奏曲が続くが、生前の師への想いは色々
に巡らされ、その感情は複雑に揺れる。
最後に長いコーダがあるが、深い悲しみと重苦しい楽想で
ある。まるで、ラフマニノフの心の整理がつかないかのような。


第3楽章  いたたまれなく、やるせない感情が激しくピアノに
叩かれる。それは、やがて弦も加わって一層高まる。言いようも
ない、張り裂けるような悲痛な心の叫びが聞かれる。
これには、こちらの魂も揺さぶられるようで、大変烈しく、かつ
深い音楽である。
曲の最後、チェロの長く伸びた低音は、「一種の諦観ないし安らぎ
にも似た境地」(解説文)を表しているのであろう。


ピアノ協奏曲や交響曲に聞く甘美さとは異なって、聴き手の心を
えぐる深い音楽となった傑作と言えましょう。


 演奏:セレブリャーコフ、 ワイマン、 ロストロポーヴィッチ(LP)