ラフマニノフ自作自演による協奏曲の録音は、ネット情報と
しては今まで目にしていたが、実際聴くのは今回が始めて
である。
先日届いたバッハのブランデンブルク協奏曲集のCDと共に
注文していたもの。
録音は、2番が1929年、3番が1939~40年で、いずれも
「Historical Recordings」であるが、今日は録音の新しい方、
第3番(ニ短調 Op.30)の協奏曲を聴いた。
第1楽章冒頭のオーケストラの序奏に、「速いな~」と思う。
まるで小走りの感じで進み、それが魔法の力に操られるよう
に高揚する。
一段落して低弦の旋律が出るところは、さすがにゆっくり。
そこにピアノが加わり、聴き進んでいくにつれて感じられるのは
ピアノが非常に即興性の香り高い演奏に聞こえることだった。
勿論即興演奏でない筈だが、まるでそんな雰囲気なのだ。
自由自在、音楽の起伏を、それに相応しい見事な表情をつけて
しかも、その流れが非常に流暢なのだ。
音は軽やかなタッチに聞こえるが、再現部手前のカデンツァは
かなり迫力を伴って見事。
オーケストラの音質が劣るのは録音年代から致し方あるまいが、
所々恐ろしいほどの情感を表出している。
楽章の最後、終わり方のユニークな雰囲気もそうだ。
第2楽章の最初も、音質を忘れさせる豊かな表情を感じさせる。
中程からのピアノは、もう自由奔放に思えるほどすばらしい。
オーケストラと合っていようが、多少ずれていようと、そんなこと
お構いなし、とでも言わんばかりに・・・。勿論ずれてはいないのだ
ろうけれども。
第3楽章 オーケストラもピアノの即興性に合ってきた、そんな
風に聞こえて、まあとても面白い。
金管の音も迫力ある輝き。音に馴れてきた所為があるかも知れない。
最後、ラフマニノフお得意のコーダ。聞かせますね。
面白かったのは最後の最後が速くなったこと。
ともかく、ピアノのフレーズが流暢なだけでなくて、血が通っている
感じ。その生気は今まで聴き馴れていたのとはまるで違っていた。
これぞ、ラフマニノフの名人芸なのだろう。
オーケストラもその表情によく合った名演だったと思う。
演奏:ラフマニノフ/オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団