スメタナの交響詩「我が祖国」の後半を聴く。
「後半」と言っても、私の勝手な便宜上の呼び方、LPレコードの
2枚目に当たる。
交響詩「ボヘミアの牧場と森から」 この曲は京響の初代指揮者
時代のコンサートで聴いたことがあって、冒頭の弦合奏の旋律が
よく思い出せる。旋律と言っても、同じ音形を繰り返すだけのもので、
これは風による森のざわめきなのであろうか。
ただ思い出せるのは、その部分(最後に再び出てくるが)だけで、
後はすっかり忘れてしまっていた。
森のざわめきが治まると、木管の静かな音楽が続き、「モルダウ」の
後半、月光を浴びる水の精の音楽を思い出せるような部分もある。
しかし、全体的には、私が思い浮かべる牧場や森のイメージよりは
かなり動的な音楽になっている。
スメタナはこの曲を書いていた頃は、この地方に移り住んでいたらしく
すでに聴力を失っていた彼の、自然から受けた幸せ感を反映している
ようにも感じられる。 とても明るく開放的な音楽である。
交響詩「タボール」 極めて謎めいた音楽に始まる。解説によるとフス
教徒の賛美歌の旋律らしい。やがてブラスの強奏で、その旋律は明確
化される。解説にある、フス教徒の「不屈の精神」をよく表していて、曲中
何度も繰り返される。
ネットで調べると、ヤン・フスが堕落したカトリック教会の聖職者たちを
告発したことに端を発した、キリスト教の改革派(フス派)と教皇側の
戦闘(フス戦争)を表した曲で、戦場の一つが題名のタボール(ネット
ではターボル)であるらしい。
速いテンポによる戦闘描写の後に、再び賛美歌の旋律がブラスによって
奏されてこの曲は終わる。
交響詩「プラニーク」 前曲の闘いで最後には敗北を喫したフス教徒
の戦士はプラニークという山に隠れ、いつかボヘミアのために再び戦う
機の熟すのを待つ。
曲は全曲の賛美歌が冒頭から力強く奏され、プラニークの周囲の風景
や敵の来襲などが描写されているらしいが、あまりよく分からない。
この曲の表している意味を度外視すれば、曲として統一を欠くような、
色々の要素が混合しているような、一寸不可解な面も感じたりもするの
だが、最後は冒頭の賛美歌の旋律が、「高い城」の旋律に溶け込んで、
更には「モルダウ」の最後のような華やかさになって、勇壮な終曲となる。
「高い城」の過去の栄光とチェコの人々に親しまれているモルダウの
自然美とを、フス教徒の精神と勝利にダブラせて、チェコ人の「我が祖
国」への愛と歓喜を謳い上げた・・・・・LPの解説だけでは分かり辛く、
ネット情報の助けを借りて、一応はなんとか分かりかけた程度ですが
・・・・・曲ということです。
他の演奏とは比較出来ていませんが、実に精緻なアンサンブルで、特に
聴き栄えのあるところを意識させない点が、却って見事である。じっくり
聴いてじんわり良さが味わえる、飽きのこない名演と言うべきでしょうか。
演奏:クーベリック/ボストン交響楽団