ヘンデル 組曲「王宮の花火の音楽」(ハーティ編) | 音に巡る想い(2005~2010) / ビデオ画像と音楽(2011~)

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クラシック音楽に目覚めたのはSP時代だった。知人から借りたレコードが
きっかけ。後にLPを集めたりしたが、時に感動して涙した頃が懐かしい
な~。/

主に四季の花や自然の風景などビデオ撮りした動画に、出来るだけ自作のBGMを付けて載せたいと思います。

サージェント(マルコム), ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団, ヘンデル, ハーティ
ヘンデル:水上の音楽&王宮の花火の音楽

昨夜は宇治の花火大会であった。4年前に引っ越してきた
マンションのリビングから、真正面にその花火が見える。
引っ越してきた最初の3年間は来客などで落ち着かなかったが、
昨夜は初めて妻と2人でゆっくり花火が見られた。
遅めの晩酌で、多目のアルコールで。
設備が改良されたのか、昨年までとは違って、殆ど間断なく
花火が空に上がる。
しかし、花火そのものは趣向を凝らしたデザインと色彩に新しさを
感じられた反面、昔のような華やかさは半減したように思われた。


それで、今日はヘンデルの野外用音楽の傑作「王宮の花火の
音楽」(ハーティ編)
を聴いた。
従来はもっぱらカール・リヒター指揮の演奏を聴いていたが、今日は
サージェント/ロイヤル・フィルのCDで、初めて聴くものだ。


(1)序曲  以前取り上げた「水上の音楽」もそうであったように、
ゆっくりしたテンポで始まる。ゆったりと、ふっくらと、音は柔らかくて
長く保たれ、音の切れ目が殆どない。
アレグロに移る直前の管の合奏のニュアンスと、アレグロに入って
からの表情の豊かさには驚かされ、それはそれは感動ものであった。


(2)アラ・シチリアーナ  弦がおもむろに柔らかく、静かに、そして
やはりゆっくりと奏でる音楽は静けさに満ちていて、そこに入念な
感情の想い入れが感じられる。平和・祈り・厳粛・・・などの感情が
湛えられて、こんなのは類稀なほど、と言いたい。
最後は消えるように終わる。


(3)ブーレ  木管のクレッシェンドとディ・クレッシェンド、強弱など
から、ニュアンスの豊かさが感じ取れ、すばらしい音楽である。


(4)メヌエット  勇壮な第1メヌエットと、それに次ぐ短調の哀愁を

帯びた第2メヌエットは、見事な対照をなしている上に、第2メヌエットの

演奏が極めて弱層、繊細である。それが極度になった時、突然左の

スピーカーから聞こえ出した小太鼓のトレモロには、思わず身震いし

てしまった。
これが最初の第1メヌエットに繋がって全曲が堂々と結ばれるのだ。


本来は、オーストリアの王位継承問題をめぐる英仏間の戦争が終わっ

た平和祝典用に作曲され、オーボエ24、ファゴット12、トランペットと

ホルン各9などと、とてつもない大編成の曲だったそうだ。
今日それを演奏会用に編曲されたものを聞いているわけだが、最初の
序曲などにその壮大さが見事に感じられるばかりか、(2)(3)における
楽器の変化と曲想の変化にも、ヘンデルのすばらしい情趣がたっぷり
味わえて、これはすばらしい名曲となった。

なおかつ、サージェント指揮によるこの演奏は、この情趣の妙を極度に
入念に演奏されたものと思い、間違いなく名演と言い切れると思う。


なお、ついでながら、祝賀会当日のおおがかりな花火は失敗に終った。
いや、実は仕掛け花火のために櫓を組んでしつらえた大きな城の模型が
燃えてしまったのだという。
おやおや、この名曲の生まれる裏になんという不運があったことか。


演奏:サー・マルコム・サージェント/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団