モーツアルトにはフルート協奏曲が2曲あって、昔からニ長調として馴染み
深かったのは第2番の方である。
しかし、これは実は元々はオーボエ協奏曲ハ長調だったんですね。
昔はそんなこと知らずに聴いていたよ。
解説などによると、モーツアルトはフルート協奏曲2つの作曲を依頼された
けれども、一曲しか間に合わなかった。それで先に作曲してあったオーボエ
協奏曲のオーボエをフルートに置き換えたというのだ。
筆の早いモーツアルトにして何故?と思うのだが、モーツアルトはフルート
の音色ををあまり好んでいなかったらしい。
かわいそうに、モーツアルトは約束の代金の半分しか依頼者から払って貰
えなかったとか。
まあ、それにしても、この協奏曲の方が原曲より、またもう一つのフルート
協奏曲よりもポピュラーになっているようなのも面白いことだ。
いや、タイトルは第1番だな。 両フルート協奏曲がカップリングのLP盤、
オーレル・ニコレとジンマン指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦
楽団の演奏で、第1番 ト長調 K.313を聴く。
オーケストラの颯爽とした出だしに、ホルンがおどけたような愉快な合いの
手を鳴らす。モーツアルトらしい明るくて爽快な雰囲気を感じる。
しかし途中で、これも如何にもモーツアルトらしい暗い影の差す部分もある
にはあるが、全体として溌剌として、均整のとれたソナタ形式の曲である。
第2楽章はやや荘厳味のある弦の旋律で入り、すぐフルートに受け継がれ
て、静かに落ち着いた音楽が流れる。分かり易い旋律と言うよりは含蓄味が
あり、どちらかと言えばモーツアルトの音楽にしては暗い方であろうか。
それより、非常に高い気品が空間を満たしている、という印象を受ける。
これを聴くには、それにふさわしい場を選びたいようにも思えてくる。
この後に鳴り始める旋律の、なんと愛らしく可憐なことか。第3楽章である。
曲想が滞ることなく、次々と流麗に美しいフレーズが紡ぎ出され、また時とし
て歯切れよく、実に音楽が生きている。
フルートもよく活躍して華麗さと優美さを極めて、いつまでも尽きることがな
いように願いたいところ、滑らかな短いフレーズが現れて、静かにそっと余
韻を置くように曲を閉じるのである。 私はこの楽章を最も愛する。