よく質問をいただくのですが、「やる気がないスタッフにはどのように接したらいいでしょうか」という問題です。

 

「あいつはやる気がない」、この意味について考察してみたいと思います。

 

 まずどんな時にそう言われるのかですが、自分が情熱を持っていて、相手にその情熱が感じられないときに、そう言いたくなるのではないでしょうか。つまり「気持ちの問題」なんだから、やろうと思えばすぐできるのになぜやらないのかと。

 

 結論から言うと、「やる気」というのは気持ちの問題ではなくて、「リスクテイク」の問題だと思うのです。「気持ち」のように誰でもすぐにできることと違って、その人のもともと持っている性格・性質や年齢などライフサイクルの時期、資産や環境の背景、家庭の状況などによって変わってくる問題だと思います。もっと経営的にいうと、「人的資源リスクを取らない」という意味だと思います。言い換えれば、俗にいう「サラリーマン化」しているということでしょう。

 どういうことかというと、例えば、世界中でリスクを取っている人たちが勝ち残っているのは事実なわけです。イーロン・マスクも言っていますが、「週40時間だけしか働いていなくて上手くいくはずがない。80時間働くべきだ」と。それは極端だとしても説得力があります。自分自身の人的資源である、時間や情熱というリスクを投資すれば見返りも大きくなりやすいからです。

 

 日本が成長期にあったときにはそれでも良かったのです。金利が4%などという時代は、銀行に預金を預けてさえいればそれなりに増えていきました。それと同じことで、とりあえず仕事さえしていれば将来的に不安はなかったのです。景気がいい(需要が拡大)時期は、黙っていてもお客様が増えるし単価も上がるので、工夫する必要がないから「気持ちの問題」に話がすり替わりやすいのですが、この考え方が「失われた30年」を引き起こしたというふうに考えられており、今日本で、イノベーションの起こらない背景に「働かないおじさん」というのが問題になっているわけです。

 

 確かに、自分が一生懸命やっているときに「やる気がない」ような人を見ると腹が立つのは理解できますが、これが「リスクを取らない」人だと思うと腹が立ちません。リスクを抱えることができる背景は人それぞれですから。例えば、介護しなければならない人も家庭がある人もいるし、若くて自宅から通えて仕事に情熱を注げる人もいるわけです。また、子育ての時期は取れないけど、10年経ったらしっかりリスクを取ってバリバリやりたい人も多いわけです。

 

 一般的に誰でもはじめは「やる気」をもって取り組むけれど、そのうち、頭打ちになったり慣れたりして、長期に渡って情熱を維持していけるのは極々限られた人しかできない訳です。(これについてはまたの機会に)

 「やる気」とは気持ちの問題のように感じます。しかし、本当に気持ちの問題であれば、それは他者からうかがい知ることのできない、本人にしか分からない問題でもあります。今の時代は、気持ちの問題で解決できるほど単純ではなくなってきていますので、「やる気」と「リスク」は分けて考える必要があるのではないでしょうか。

 

 

 

では、続きはまたの機会に。