上野で開催されている『デ・キリコ展』。
思った以上に楽しめて、帰宅後にいろいろ調べていたら、さらにおもしろさが増した。

 

 


入ってすぐの展示は、自画像の数々。ここからして、これから繰り広げられる世界が、いかにアクの強い人間が創ったものかを思い知らされる。
(コスプレ感や絵面のくどさが森村泰正を彷彿とさせたのだが、共感してくれる人がいるかどうかはわからない)
いかにも自信満々。不遜さ丸出しの自画像。こういう人だったのか。


 

 

彼は1978年に90歳で亡くなるまで、たくさんの作品を制作した。
いろんな芸術家や土地に影響を受けて作風が変化していくのだけど、過去の作風に戻ったり、過去の作品のモチーフが繰り返されたりもしている。

 

「ああ、長く生きた今の自分の目で、過去の体験を再構築しようとしたのかな……」なんて思ったのだが、どうもそんな感傷的な人間でもなさそうだ。
過去の作品を自分で模倣して、「偽造作品」として非難を浴びもしたと、後で知りました。
どんな心づもりだったかは知り得ないが、他者との軋轢はなかなかにあったようだ。

 
絵については、おもしろいけど良さはわかるようなわからないような、という感じでした。それが帰宅して「山田五郎 オトナの教養講座」の期間限定公開「「デ・キリコ展」の楽しみ方まる分かりSP」を見て、「それだ!」と一気に腑に落ちた。


(著作権の関係で、期間限定公開らしいです)

 

 

彼の描く風景画の風景は、馴染みがないけど、なにかが馴染みがある。なにかを思い起こさせる。と思っていた。

本人の手記によると、見慣れた街の風景を見ていて、あるとき、「すべてを初めて見ているのだ」という奇妙な印象を覚えた、その感覚を描いている、のだそうだ。

五郎さんもそういう瞬間がよくあるという(一種のゲシュタルト崩壊、という表現をしていた)。
わたしもよくある。
そのときの感じと、確かによく似ている。いつもの街角が、突然ばらばらに解体され、人は消え、音も消え、とてつもない孤独感が押し寄せる。

その感覚で今日見た作品を思い出してみると、なるほど、と思う。だからって「わかる~」とも言わないが、少し作品に近づけた気がする。ありがとう、五郎さん。


(鑑賞後は2階にあるレストラン「ミューズ」で、大好きなオムライスと抹茶アイス)

今日はアート好きの美女4人(自分も含む)で行ったので、鑑賞後にあれこれ語り合えた。
それもあって、大変に楽しんだのでした。

 

▶デ・キリコ展を観に行った話のつづきはこちら

 

 

■『デ・キリコ展』
会期:~2024年8月29日(木)

会場:東京都美術館