仕事の入っていない日に時々立ち寄る大衆食堂がある。
喫茶店で仕事の着想を練る人がいると聞くが、仕事のない日は昼間からビールを飲むことにしているので、喫茶店は使えない。
居酒屋の営業時間も大抵は夕方5時からなので、これもだめ。
ファミレスは10時から開いているが、11時頃になると、早目の昼食をとりにやってくるサラリーマンがいる。
仕事中の人の横でビールを飲むのも失礼な話だし、知ってる人に出会ったらバツが悪い。
滅多に客の来ない大衆食堂が丁度いいのだ。
この食堂はとにかく客がほとんど来ない。
店には60を過ぎたおばちゃんがいるだけ。
たまに来る客も、近所の年金生活者と思われる高齢者だけである。
知ってる人と出会う可能性はまずない。
先日もその店に入ってボサッとしていたら、20歳くらいの男女が入ってきた。
これから旅行にでも出掛けそうな格好をしている。
少なくとも、「たまには外食」といった感じではない。
それに、たまの外食だったら、何も大衆食堂には来ないだろう。
バッグは小さいものだったので、長期の旅行ではなさそうだ。
言葉使いは丁寧で、カツ丼と親子丼、それにきつねうどんを注文していた。
初めての客らしい。
若いカップルが、何でこんな店に来るのか?
もしかして駆け落ち?
遠くに旅立つ前の腹ごしらえか?
バッグが小さいのは、家族に駆け落ちを悟られないために、身の回りの物だけを詰めてきた。
必要なものは、後で買えば済む。
でも、真昼間から駆け落ちもないだろう。
2種類の丼を半分ずつ分け合って、うどんも半分ずつ分けて食べていた。
静かに話しながら。
かといって、深刻な雰囲気ではない。
駆け落ちは考えすぎか。
心中?
死ぬ前なら、もっといい店に行くだろう。
大体今時、あの世で結ばれようなんて考える人はいない。
親から見離されて家を出た。
これなら考えられる。
神田川を思い出した。古い話だが。
これから二人で安アパート住まいをして、銭湯に通う生活をするのか?
二人が帰ってからおばちゃんに聞いた。
「さっきの二人、どういう関係やろ?」
「そんなん知らんわ。どうでもええやん」
確かにどうでもええことだ。
マンウォッチングは私の趣味ではないが、どうも気になって仕方がない。