「私が死んだら、あとは頼むから」と、師匠は言いました。私はびっくりして、
「護摩の前で、そんなこと言わないで下さい」
と慌てて否定しました。
私たちは護摩壇の前で話をしており、私は炊いている護摩の前でたてた誓いは、破ってはならないことだと本能的に、感じていたのです。
師匠はいろいろなものが視える人です。
もしかして、ご自分の寿命や病気のことも視えているのかもとヒヤリと焦る気持ちが芽生えました。
「……(あなたの)荒行は終わった」
……えーーーっっ
あの、大変だったここ最近の数年間。恐ろしいことが次々と起き、お祓いをやっても、何をやっても逃げることも、祓うことも、どうすることもできなかった日々。
頻繁に起こる事故やケガ、さまざまなトラブル、理不尽にしか思えないできごとの数々。
それらはすべて、私の荒行のためだったというのでしょうか。
私は片付けの好転反応と思っていたけど、視える力のある師匠には、今、その原因が視えたようです。
そして、それはなんと私への"荒行"だったというのです。
意外な発言に、私が返事もできないでいると、師匠が続けました。
「……筋腫、まだ大きくなるかも」
何か視えたのか、師匠が私にそう言いました。私は怖くなって、
「ええっ、でも年齢的にももうそんなに大きくはならないはずですが」
と言いました。師匠は、
「うーん……」
口には出さなかったけれども、まだ大きくなりそう、とそれは言いたそうでありました。
「大きくなったら、困るんですが。何か縮む方法、ないでしょうか」
すると師匠はいったん台所へ行き、また戻ってきてから、28種類の薬草が入った毒出し茶を私にプレゼントしてくれました。
「(筋腫は)食べちゃえばいいんでしょーって、兵士たちが言っている」
そう明るく言いました。
それから師匠は私の筋腫の位置をたずね、そこに手を当てました。そして、しばらく目をつぶって、念を送ってくれました。
満身創痍で病気を抱えた師匠。私の筋腫もさることながら、師匠の病気が和らぐ方法は何かないのか。私は手当てを受けながらも、師匠が心配になってきました。
師匠の症状は深刻です。私も筋腫に悩んでいます。
師匠とは10数年を超えるつきあいですが、お互い歳を重ねて、病気を持つ世代となっているのです。
心に少し引っかかりが残る、この日の師匠と私の対面でした。