「どうして、これがいいのですか」
3体の仏像は、どれも綺麗な形をしています。でも、仏師の手彫りゆえ、少しずつ、顔立ちや後背のカーブが異なります。
「これは、仏像の身体に芯が通っているから」
そう言われてよく見ると、頭のてっぺんから胴体までその仏像だけ、身体に芯が一本、まっすぐ縦に通っている感じがします。
ほかの仏像も、もちろん真っ直ぐなのですが、おすすめされた仏像は木に無理をさせておらず、掘りだした感じがするのです。
「もちろん、他がダメなわけじゃないよ」
お爺さんは、優しく言いました。
ただし、すすめられた仏像は、予定より1万数千円ほど、予算オーバーでした。
それでも、今まで回った中では、価格も一番良心的な店だと思えたので、ここで買う気持ちにだんだん、傾き始めました。
とはいえ、気軽に買い替えのできないご本尊様。即決はできません。
決めかねていた時、ふと、店内を見回しました。
この時、初めて気がついたのですが、ずいぶん、歴史がありそうな店内です。壁にはモノクロの古い写真が何枚も飾ってありました。
「お兄さんのお店……ずいぶん古そうね」
「うちは、関東で一番古い仏壇屋なんだ。隣に工場もあって、仏壇通りにも、10軒、商品を卸してる」
あとで知ったのですが、ここは江戸指物の伝統を受け継いでいる老舗中の老舗。
ほとんどが機械製造になってしまった昨今の仏壇製作に対し、ほとんどの作業をいまだ、できうる限りの部分は、手作業にしている会社なのです。
その真摯な姿勢は、自社で材料の木材仕入れから始まり、木の乾燥から仏壇製作、そして最後の販売まで、一貫してこちらで行っているそうです。
仏壇を作る作業には、職人さんたちの手製により、200種類作られた鉋(かんな)を使い分けて、製作するそうです。
東京都の伝統工芸品、「東京仏壇」として、東京都知事賞、台東区長賞など、過去には数々の受賞歴もありました。
それらはすべて、後から知ったことでしたが、とにかく目の前にいるこのお爺さんは、関東で一番古い店といっても、ちっとも威張っていないのです。
それに、置いてある仏壇も仏像も、お値段はむしろ良心的で、納得できる価格の物が多かったです。
ここは本物の職人集団として、真のプライドが感じられるお店なのでした。
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