二人の夏休み~いつも忙しい君だから~ side 翔 #5 | Crazy Moon -ふたばのブログ(仮)-

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「ねぇ。翔ちゃん?」

『んー?』

「ところで‥‥どこ行けばいい?」


彼女が運転しながら問いかけてきた。


『えっ!?』

「えっ!?」


驚くオレに驚く彼女。

……ん?


『あ、そうか。』

「そうそう。今日はね、私 運転手だから」


そうだった。

いつもはたいていオレの運転だから、うっかりしてたわ。


「今日は、翔ちゃんの行きたいとこ。何処でも行っちゃうよー‥‥」

『今日はさ?旅館、直行。』

「えっ??!!」


オレの答えに驚く彼女。

なんだよー、いいじゃねーか。


「いつものは?」

『ん?今日のスケジュールは、まず旅館に向かう。』

「スーパー緻密スケジュールじゃなくて??
旅館‥‥??もう??」

『いーから。まずは、旅館なの。』


ったく。

今回はゆっくりする旅だって、最初に話してたのになぁ?

でも、彼女はいつものアレを望んでるみたいだし。

オレはとりあえず感を出すことにした。


『ま、ず、は!だからな?』

「??‥‥はぁ~い‥‥」


首を傾げながら返事する彼女。

そんなところもかわいいんだよな。


『ふ~ふふ~ん~~♪』

「‥‥。」

『ふ~ふふ~ん~~♪』

「‥‥翔ちゃん?」

『ん~?』

「なんか‥‥いい事あるの?」


なんか気分よくなって、鼻歌が出る。


『そりゃ、おまえと旅行なんて久々だからな?』

「‥‥。そぉだけど‥‥それだけ??」

『まぁ、ね?』

「ふぅ~ん」


やっぱさ?
楽しいんだよなぁ。

夏海が隣にいるだけで、幸せ感じるしな。


『そういや、おまえ、二人で初めて行った旅行先で、なにがあったか、覚えてる?』

「初めての‥‥旅行で?」

『そ、初めての。』

「何かって‥‥何か‥‥あった??」

『おいおいおいおい!まじか!?』


なんだよー!

オレ的にはすっげー忘れらんねぇことなのに!?


「ちょっ!ちょっと待って待って。いきなりだったから‥‥もちろん覚えてるよ!
あれでしょ?アレ‥‥」

『じゃ、言ってみ?』

「えっと‥‥あっ!」

『ん?』

「あれでしょ!」

『あれって?』


慌てる彼女の答えを待つ。


「翔ちゃんが、お部屋の露天風呂で のぼせて具合悪くなったやつ!
ね!当たりでしょ~」

『‥‥そんなこともあったけどな。』

「ね~♪」


いやいや、そんな思い出じゃねぇし。


『でも、そうじゃねぇよ。もっと大事なこと。』

「 違った??じゃあ‥‥」

『‥‥うん?』

「翔ちゃんが、最後に食べようと思って残しておいた 私のフグ、食べちゃったこと?」


は、はぁ!?

そこ思い出すか?


「あれ‥‥ショックだったな‥‥」

『だーっ!もう、おまえさー!?なんで、そんなことばっかなの!?あれは謝っただろ!?』

「まぁ~ねぇ~」


なんか上からな答えをしてくる彼女。

あー、くそぉ、マジかよ!?


なんて凹んでたら……


「慌てて謝ってくれた翔ちゃんが可愛いかったから 許してあげたんだよ」


彼女の言葉に恥ずかしくなってさ。

オレは誤魔化すように問いかけた。


『っつーか、ホントにわかんねぇの?』

「えっ?あとは‥‥ぁっ‥‥。もぉ‥‥翔ちゃんのエ ッ チ‥‥///」


ん?
ちょっと待って?

もしかしたら思い出したような雰囲気がしたけど。

微妙?あってんのか?


『ふふっ、思い出した?』

「初めて‥‥お外で ちゅーした‥‥///もぉーー!!恥ずかしいじゃん」


あー、やっぱ微妙に違ったわー!!


『ぅおーーーーい!おまえさー?本気!?
もっと大事なこと、あっただろーが!!』

「へっ??だって 外でちゅーなんて、普段なら絶対ないじゃん!私、ちょっと嬉しかったんだけどな~」


そりゃね?
なかなかできることじゃねぇけどな?

まぁ、夏海がそう思ってくれてんのは、嬉しいかな。


『んじゃ、今日もしてやるよ?』

「!!!///」


ふっと笑うと、彼女が慌てたように答えた。


「‥‥予告‥‥されると‥‥///」

『ふふっ、楽しみが増えたな。』

「もぉ‥‥///」


可愛いな、マジで。

今すぐにでも、キスしたくなるわ。


でも、少し我慢な。


そしてオレは首を傾げながら、問い直した。


『っつうかさ?ホントにわかんねぇの?』

「ちゅー?」

『ちげぇよ。初めて‥‥』

「‥‥。」


沈黙する二人。

オレは彼女の言葉を待ってみた。


「初めて?‥‥翔ちゃん??」


やっぱ、わかんねーか。

オレは彼女をジッと見つめた。


『初めて、おまえから「好き」って、言われた。』

「‥‥えっ??そぉ‥‥だっけ‥‥///言ってない?その前でも」

『そうだよ!それまで1度も言ってくれてねぇし。』

「そぉ‥‥だっけ‥‥///」


あー、やっぱなー。

覚えてなかったよ。


『オレが「好き?」って聞いたら、「うん。」しか言ってくんなかったしな。』

「あぁ‥‥まぁ‥‥そんな気も‥‥」


でも、彼女の言葉に、覚えてなかったんじゃなくて……

オレの想いがそこだったことに驚いてるだけだって、わかったんだ。


「そんな事‥‥覚えてて くれたの?」

『当たり前だろ?その後、おまえからキスしてくれたしな?』

「///」

『初めてだらけ。』


なんか、あの日を思い出したら、頬が緩んでくわ。


「なんか‥‥照れるね‥‥///
なら‥‥今度は 翔ちゃんの番ね?」

『えっ!オレ!?』

「そっ!初めてだらけ‥‥してもらおっと♡」

『なっ!なに!?』


彼女が急にいたずらっ子の顔を見せる。

うっわー、マジか!?


「んふふ。なぁ~んだろね。楽しみが増えたね♡」

『うぉー!なんか、こえーな。』

「大丈夫。だって翔ちゃんが頑張ってもらう事だからね。私に 初めてを 頂戴ね♡」

『‥‥よくわかんねぇけど。頑張るわ。』

「うん」


楽しそうにしてる彼女。

ま、たまにはいっかな、そんなのも。


オレがふっと頬を緩めていると、ナビから音声が聞こえた。


ー目的地周辺です。ー


「あっ。目的地って あれかな??」

『お、そうみたいだな。』


海の側にあって、ちょっと特別な雰囲気の宿。

今回、ここの宿にした理由はもちろんちゃんとある。


夏海、喜んでくれるといいな。


「はぁ~!!着いたね~お疲れ様。翔ちゃん」

『運転、お疲れさん。』

「どういたしまして♡」

『ありがとな。』

「ふふっ」


自分と彼女の荷物を持って、オレは先に宿に足を踏み入れた。


ーいらっしゃいませー

ーお待ちしておりました。ー

『どーも。よろしくお願いします。』

ー‥‥では。お部屋へご案内いたします。ー


落ちついた趣のある内装に、ホッとする。

彼女の好きそうな雰囲気だ。


「翔ちゃん‥‥素敵な旅館だね。雑誌で見るよりも、素敵。」


『そうだな。』


やっぱ、この宿にしてよかった。

これからの時間が、あったかくて、幸せなものになるって確信がした。